クラウド・ファンディング:広く浅く出資募るネット版『マネーの虎』
起業の世界で最近、注目されている動きがクラウド・ファンディングである。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語だ。主にインターネットを利用して、個々が少額でも多くの人数から出資を募り、必要額を調達する仕組みだ。
11年3月の東日本大震災では、多数の「復興ファンド」が立ち上げられた。津波で設備を失った養殖業者のために1口5000円プラス寄付5000円で計1万円を募り、復興が成った暁に商品である海産物などを届ける……といったやり方である。
クラウド・ファンディングは、こうした公益性のある資金集めだけでなく、事業を立ち上げる資金を集めるときにも用いられる。起業を志す人間がネットで事業案をアピールし、賛同した参加者が「1口いくら」で資金を投ずる。起業家への投資は、従来はベンチャーキャピタルをはじめとする金融機関の仕事だった。それを多くの一般個人が担うところが画期的だ。
一般人が自身で立てた事業計画を審判員たちの前でプレゼンし、審判員たちが出資の可否を決めるという往年のTV番組『マネーの虎』が、イメージとして近いのではないか。
クラウド・ファンディングとはやや異なるが、近年の小規模ファンドの増加も目をひく。これは起業家に300万~500万円程度の、スタートアップのための少額投資を行うファンドだ。
また、アメーバピグを運営するIT系企業サイバーエージェントなどが、ベンチャー企業の資金調達や事業提携のために企業と金融機関を集めたイベントを開催しており、こちらもベンチャー企業にとっての新しい資金調達のスタイルといえる。