●カリスマに学ぶ「ワタミ塾」
車屋酒場店主 
熊谷栄規 

震災前は陸前高田の駅通りで8年間居酒屋を経営。手作りにこだわり、昼過ぎから黙々と仕込みを続ける。矢沢永吉の大ファン。

その熊谷に元気を吹き込み、もう一度店づくりをしたい、という気持ちにさせた人物がいる。震災後、陸前高田市参与に就任していたワタミ会長の渡邉美樹だ。

「5月に仮設住宅の視察ということで俺の家に来てくれたんです。そのとき『同業者じゃないか。バラックでいいから、もう1回やろうよ』といってくれて。でも町の将来像が見えないし、中学と高校の息子たちを抱えてこれからカネもかかる。『気持ちはあっても踏み出せない』と答えました。すると会長は『わかった。自分のやるべきことが見えてきたよ』というんですね」

渡邉が企画したのは、小学校のグラウンドに70軒近くの屋台を並べた真夏の復興イベントだった。運営するのは地元の商店主たち。もちろん熊谷も久しぶりに包丁を握って参加した。イベントは予想以上の大盛況。

「お客さんが『すごく楽しい』っていうんです。2日間で2万円くらい使ったというおばさんもいましたね。俺たちも楽しかった。商売はこんなに楽しくて、町の人にとって必要なことなのか。それをすごく実感しました」

熊谷の店はいま繁盛しているが、将来は不透明で不安も多い。だが、逃げずにここで勝負し続けると熊谷はいう。

「貧乏したっていい。ひどい状態から立ち上がるところを息子たちに見せたい。それが教育だと思うんです」

さて、渡邉にとって「やるべきこと」はもう1つあった。地元の商店主など70人ほどを集めて、11年秋から半年間開いた経営勉強会だ。自らの経験を交えながら事業経営のあり方を説いた。そこに真っ先に申し込んだのが当時29歳だったサラリーマン、鈴木祐輔だ。