「うちは第三セクターですが、けっこう『攻めてる』会社です(笑)。この店は『高田の商品は全部買えます』ということで12年7月にオープンしました。いまのところ好調で、予算比150%の売れ行きですよ」
トレーラーハウスを改造した売店「陸前高田物産センター」の前で、にこにこしながらこう語る。大学時代にワタミの店でアルバイトをした経験があり、「渡邉会長の信者」を任じている。
鈴木が勤める陸前高田地域振興は震災で店舗や仕入れ先を失い、しばらくは会社の態をなしていなかった。なんとか売り上げを立てようとたった1人で首都圏へ商品を持ち込み、イベント会場などで販売したこともある。その苦労を鈴木は生き生きと語った。
若手社員が青空の下で伸び伸びと仕事をしている。不謹慎な言い方だが、大災害のおかげで、ここでは新しい若い芽が伸びようとしているのだ。
やはり勉強会の常連だったのが、きのこのSATO社長の佐藤博文だ。シイタケとキクラゲのハウス栽培を手がけている。2011年、味と香りのよさで一部では知られていたシイタケが渡邉の目にとまり、ワタミのメニューに加えられることになったという。
佐藤のハウスは8棟中4棟が津波に持ち去られた。しかし「被災したから、普通なら出会えない人に出会えてチャンスをもらえた。私が生き残ったということは、神様が役割を果たせといっているのでしょう」と佐藤。
現在の雇用は20人ほど。3~5年後には、ハウスを増やして「100人を雇いたい」。あくまでも飄々と、夢を語るのである。
(文中敬称略)
(的野弘路=撮影 ミュージックセキュリティーズ=写真提供)