営業スタイルは自分に妥協をしない「攻め、詰め、攻め」

では、そんな津田さんの“熱い思い”を当時の部下たちはどう受け取っていたのだろうか。

首都圏支社広域営業2部で部長を務めていた時のメンバーが津田さんに贈った寄せ書きを見せてもらうと、メンバー全員の写真の下に、「攻め、詰め、攻め」と書いてある。津田さんの営業スタイルを、部下たちが評した言葉である。

撮影=遠藤素子
チームを去るとき、メンバーからもらった寄せ書きやアルバム。「攻め、詰め、攻め」の言葉が目立つ

「私にとって救いだったのは、『津田さんは厳しいけれど、自分への厳しさもすごいからついていけます』と当時のメンバーが言ってくれたことです」

異動の度に生じる強い不安感を、津田さんは必死の努力で攻めて、詰めて、さらに攻めることで乗り越えてきたに違いない。だから部下たちは離反しなかった。

「初の女性営業課長を引き受けてくれた当時の支店長も、勇気が必要だったと思います。他に男性の課長はたくさんいるわけですから……」

首都圏支社広域営業2部を離れるとき(写真提供=サントリーHD)

支店を離れるとき、津田さんは涙ながらに支店長に感謝の気持ちを伝えたという。

「そうしたら、あまりよく覚えていないという返事でした(笑)」

津田さんは、万事、思い入れの強い人なのだろう。それが不安の原因にもなるし、チームへの愛にもなる。

ライバル会社のお膝元・静岡で悲願を目指す決意

2017年、津田さんは静岡支店の支店長に就任している。この静岡支店で、津田さんの攻めの営業スタイルは満開の花を咲かせることになった。

当時、サントリーのビールは大手4社の中の3位が定位置と言われていた。ところが、静岡では苦戦をしていた。県内にライバル会社の主力工場があるからだ。

「ちょうど支店長で行った翌年の2018年は静岡支店開設50周年でした。1年間で絶対にエリアでの存在感を増し、全社水準までポジションを上げようと本気で決意しました」

高い目標を設定して結果に執着するのは津田さんの持ち味だが、支店全体が燃えてくれなければ難しい。どうやって自身の本気度を支店内に徹底させたのだろうか。