ユーモアは、脳の「若さ」とも関係している。年をとって守りに入った人は、変化に抵抗を持つようになり、ユーモアもパワーダウンしてしまう。権威や地位に頼り、自分の成長に消極的になって停滞し、老化が始まるのだ。

組織も同じだ。欠点や課題などのネガティブな面も、ユーモアをもって話せる雰囲気の会社は成長する。それがなければ、課題への対応を先送りしたり、問題を隠蔽しようという組織文化を生んでしまうことになる。

「自虐ネタ」で、自分の欠点を笑いに変えられる人は、指導力や包容力が高く女性にモテるということが、科学的な研究結果からわかっている。他人の欠陥にも寛容で、リーダーとして信頼される要素が強いのだ。お笑い芸人の男性が女性にモテるのは、こんなところにも理由があるのだろう。一方で、自分の欠点を隠して認めたがらない人は、他人の欠点も許容できず、攻撃的であることが多い。

リーダーには、常に状況を客観的に見て問題点を直視し、改善していく力が求められる。このプロセスにユーモアをもって取り組めない人は、問題点を見逃してしまう可能性が高く、組織を成長させる力が弱いといえる。

信頼されるリーダーになるためには、ユーモアを武器として上手に使うべきだ。中でも、自分の欠点をメタ認知し、自虐ネタに変えることは、ユーモアセンスを磨く一番いい方法だと思っている。

ソフトバンクの孫正義社長は、よく自分の頭髪の自虐ネタで周りを笑わせているが、考え方が柔軟でユーモアのセンスが高い。ビジネスパーソンは、彼をお手本にして自分なりの技を磨いてほしい。

「おやじギャグ」を言うリーダーは逆境に強い

「笑い」とはもともと、危機やリスクなど、ネガティブな状況と密接に関係している。

進化論で有名なチャールズ・ダーウィンは、笑いの起源について「偽の警告仮説」を唱えている。群れに外敵が近づいているのを見つけた1匹が警告の叫びを上げる。でも、それが実は敵ではなかったことがわかったときに、仲間の緊張を解くために、顔の筋肉を弛緩させてニヤリとした表情を見せる。このような、「敵は来ていないので安心だ」ということを知らせて仲間の緊張や不安を和らげるサインが、笑いの起源だとしている。