危機的状態のときほど、部下の緊張を解きほぐしてフロー状態に近づけるために、リーダーはユーモアを活用すべきだ。暗い雰囲気のときでも、空気を変えて部下をリラックスさせ、潜在能力を発揮できるよう促すのがリーダーの務め。おおげさなことをする必要はない。おやじギャグで和ませるのも手だろう。
東日本大震災後の福島第一原発事故の対応中に、菅直人前総理大臣が関係者を怒鳴りつけたりしたと聞くが、これはリーダーとして一番やってはいけないことだ。部下のフロー状態を引き出すことができないばかりか、問題点を見つけ出して共有するためのメタ認知の力を、抑えつけてしまうことになりかねない。
こういうときこそ、ユーモアをもって落ち着いて対応すべきだろう。ユーモアには即効性があるので、極度の緊張状態にあるときでも、瞬時に周囲をリラックスさせる効果があるからだ。
共和党の故ロナルド・レーガン氏が米国大統領だったときに、挙銃で狙撃されて病院に運ばれたことがある。病院に着いたレーガン氏は医師らに「君たちは全員、共和党員だろうね?」というジョークを言い、その場を一気に和ませたという。危機的な状態のときにもユーモアを忘れなかったレーガン氏への国民の評価は上がったそうだ。
ユーモアが場の雰囲気を和ませるのは、前頭葉にあるミラーニューロンというシステムが関係している。これは他人の行動や気分が自分にもコピーされるメカニズムである。相手が不愉快な気持ちでいると、自分も不愉快になるし、相手が笑っていると自分も楽しい気持ちになる。
商談などで条件が合わず、気まずい思いになったときでも、タイミングよくユーモアのある一言があって楽しい気持ちになると、互いにその楽しい気持ちがコピーされあって、前向きに「もう1度検討してみましょう」となる。
ユーモアは、楽しい気持ちの起爆剤になりえるのだ。だからチームを組む場合でも、ユーモアのある人が1人いれば、チームワークがうまく回って高い成果が期待できる。外交交渉の場などでも、そういうお笑い担当の人がいてもいいかもしれない。