笑うと創造力が高まり、良いアイデアも出やすくなる。これはおそらく、笑うと、嬉しいときなどに出る神経伝達物質のひとつであるドーパミンが分泌され、脳の司令塔の機能を持つ前頭前野を刺激し、フロー状態に入りやすくなるためだ。

特に今の日本のように、逆境に立ち向かうときには、そうした創造性が必要になる。困難なことにぶつかると、当然脳は緊張する。大きな課題を乗り越えるためには、自分をできるだけフロー状態に近づけて、あらゆる視点から解決策を導いていかなくてはならない。ユーモアをもって脳を前向きにすると同時に、リラックスした状態にすることで、それが可能になるのだ。

はたから見てエネルギッシュな人と、悲観的で元気がない人がいるが、脳の消費するエネルギーを見ると、楽観的であっても悲観的であってもたいして変わらない。元気がない人に足りないのは、エネルギーそのものではなく、自分をフロー状態にするためのユーモアなのである。

辛いことや苦しいことは誰にでも平等に降りかかる。ユーモアをもってマイナスのエネルギーをプラスに変えられる人にとっては、「人生のエネルギー問題」は存在しない。日本は失われた10年、20年などと言われるが、私はずっと「1人高度経済成長」している。社会がどんな不景気でも、自分の脳はデカップル(分離)して、貪欲に学んでいくことができるはずである。

「自虐ネタ」は自分を修正、成長させるスキルである

ユーモアは、非常に高度で複雑な脳の働きによって生まれる。中でも特に重要なのが「メタ認知」だ。これは前頭葉の働きで、自分自身をまるで外から見ているように、客観的に俯瞰して見ることができる能力を指す。

メタ認知ができないと、ユーモアは生まれない。人に面白いと思われることを言ったりしたりするためにはまず、自分の行動や言動が、他者から見るとどう突飛に、意外性をともなって映るかを知る必要があるからだ。

ユーモアの中でも高度なのが、自分を笑う「自虐ネタ」だ。通常はプライドや劣等感が邪魔をするので、自分の欠点を見つけてさらけ出し、笑いに変えるのは難しい。うまく自虐ネタを披露できる人は、欠点や課題から目をそらさずに、前向きに取り組むことができる。つまり、課題解決能力が高い人といえる。課題解決能力とはすなわち、自分を修正し、成長していく力のこと。