持ち運びしやすい缶入りも見逃せない

山口県岩国市の五橋(酒井酒造)の紙パックは、瓶で販売されている純米酒や純米吟醸などと遜色がないほど美味しく、長野の北安曇郡の大雪渓は「山の酒」の名の通り、登山やキャンプ、山小屋などでも楽しめる日本酒です。口にすれば、地元の方に長年愛されたことがわかる、気取らないホッとした飲み口が特徴です。

本稿で紹介した五橋、大雪渓、ギンパックのいずれの紙パックも、スーパーや酒屋さんで購入でき、最近ではAmazonでも購入可能になりました。興味のある方は、ぜひ一度試していただき、紙パックの魅力を味わってみてください。

パック酒について紹介しましたが、容器として近年見逃せないのが缶の日本酒です。缶の場合、主に180mlや200mlの飲み切りサイズが一般的で、冷蔵庫のスペースを取らずに保存できる点も魅力です。少量なので一度に飲み切ることができ、開封後の品質劣化を防げます。

また、瓶と異なり軽量で持ち運べるので、アウトドアや旅行先での利用に便利です。アルミ缶は耐久性が高く、割れる心配がないので、持ち運びも安心です。さらに、日本酒の大敵である紫外線を遮断するため、日本酒の鮮度を保ちやすい利点もあります。

缶入り日本酒のパイオニアとして知られるのは、新潟県の菊水酒造です。「ふなぐち菊水一番しぼり(現「菊水ふなぐち」)」は、多くのコンビニの棚に並んでいます。

業界の常識を打ち破り、ロングセラーに

注目すべきは、品質管理の難しい搾りたての生原酒をどこでも手に取れることです。1972年の発売当時、生のお酒を世に出すことは業界の常識では考えられない取り組みでした。しかし、爽快で濃厚な味わいをいつでも飲めることが世の中に受け入れられ、50年以上も多くのファンに愛され続けています。

ちなみに、「菊水ふなぐち」は本来の180mlの規格の缶に、フタとお酒に空気の層を挟まずにたっぷりと200mlのお酒を詰めています。これはお酒が空気に触れて酸化することで、フレッシュな風味が損なわれてしまうことを避けつつ、飲み手にたっぷりと搾りたての生原酒を存分に味わってもらいたいという想いが込められているからです。

ぜひ、缶を開けた瞬間の「なみなみ」と入ったお酒の魅力を体感いただきたいです。

また、2020年以降は日本酒メーカーではなく、調達した日本酒の充填を行い、自社でブランディングを行う企業が日本酒市場に相次いで参入しました。

オシャレなパッケージの製品が多く、若年層をターゲットにしたポップなデザインの商品も増え、新しい消費者層の獲得に成功しています。さらに、その品質保持性の高さと軽量さから輸出にも向いています。ここでは代表的な缶入り日本酒を紹介します。