ジャパニーズウイスキーの次は日本酒が来る
いまやジャパニーズウイスキーは世界中で人気を集め、私たち日本人には手が届きにくくなっていますが、日本酒でも同じ現象が起きつつあります。今後、海外への輸出が急速に拡大する可能性があるからです。
私は長年、『会社四季報』(東洋経済新報社)の読破を続けており、今年で28年目・109冊となりました。『会社四季報』を通じて、上場企業の動向を見てきたわけですが、日本酒の世界進出は、キッコーマンの成長ストーリーに似ています。
しょうゆ最大手のキッコーマンは、早くから米国に進出し、現在は北米が利益の柱になるまで、成長しています。『会社四季報』には、【連結事業】欄があります。ここには、【海外】の項目があり、売上高に占める海外比率が掲載されています。24年秋号を見ると、キッコーマンの海外売上高比率は76%になっています。
業界のトップ企業の海外売上高比率が50%を超えると、その産業はグローバル産業になります。キッコーマンは20年ほど前に食品業界で初めて、海外売上高比率が50%を超えました。このときから、日本の食品業界はグローバル産業になったのです。
自動車業界も同じです。トヨタ自動車は1990年代に海外売上高比率が50%を超えて、自動車産業がグローバル産業になりました。24年秋号では84%です。日本の産業はすべてこのパターンをたどっています。
日本酒の輸出は10年で3.6倍に増加
そして日本酒だけでみると、トップの酒蔵でも海外売上高比率は50%には達していませんが、いままさに国内から海外への進出が始まろうとしています。国税庁の「酒のしおり」(令和6年6月)によると、清酒の輸出額は2014年には約115億円でしたが、2023年には約411億円と約3.6倍に伸びています。
また、日本酒や焼酎、泡盛などの日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されることが決まりました。2013年には和食が登録されています。外国人の日本酒人気を後押しすることは間違いないでしょう。
今後も輸出が増えていくとすれば、日本酒を醸造している企業に投資することで、資産を増やせるかもしれません。しかし、小規模な企業が多く、上場企業は多くありません。
『会社四季報』(2024年秋号)で調べてみると、コメント欄に「日本酒」「焼酎」「みりん」の言葉が登場する企業は5社のみでした(図表1)。投資するなら、もう少し視野を広げて「和食」などに注目したほうがいいかもしれません。