「たった1%の酒」となれば1本500万円にも?

山廃仕込みも自然界から乳酸菌を取り込みますが、直接乳酸菌を添加する速醸酛そくじょうもとと呼ばれる方法もあります。速醸酛は自然界の乳酸菌を取り込む作業がなく、醸造用乳酸を添加するため、早く製造できます。コストも安くできるので、現在は日本酒の9割が速醸酛になっています。

結果的に山廃と生酛造りは全体の10%しかなくなりました。その中で本来の生酛造りは10%。つまり、全体の1%です。今回のユネスコ文化遺産登録は、手作業による製造法ですから、本来の生酛造りが復活する可能性があります。

それを見越して動き出す醸造会社もあります。たとえば栃木県にある酒造会社の仙禽がつくる「仙禽 無垢」は若い杜氏ですが、「すべて生酛に戻す」と言っています。福島の酒蔵、大七酒造もすべて生酛にするといっています。こうした生酛造りの日本酒を熟酒にする場合には、さらに数が少なくなります。

ジャパニーズウイスキーでは山崎の55年物を100本限定、300万円で売り出しましたが、セカンダリーでは8000万円で取引されています。先日も響の40年物が限定販売されましたが、申し込む際に500字程度の文章を2本書いた上で抽選があり、当たった人には440万円で買う権利が与えられました。

そう考えると、本来の生酛造りの熟酒であれば、1本500万円程度の価格設定も十分にありえるでしょう。本格的な価格上昇が始まる前に日本酒を楽しんでおきましょう。

(聞き手・構成=向山勇)
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