純米大吟醸を氷温で5年以上熟成

そう考えると、幻想に高額な値段がついているともいえます。欧米人には「ワインは古いほうがいい」という人が多くいます。同じように熟酒にも期待が高まり、潜在的なマーケットは非常に大きいと思います。

ちなみに日本酒を熟成させるのは大変です。ただ保管するだけではなく、温度管理が非常に難しいのです。さきほどの黒龍は純米大吟醸を氷温で5年以上、保管施設で熟成するそうです。おそらく瓶詰めの前の段階で樽に移して保管しているのではないかと想像しています。

私がよく行く居酒屋の店主はまだ25歳ですが、無類の日本酒好きで家に一升瓶を450本保管しているそうです。冬は窓を開け放して、寒い中で暮らしています。夏はエアコンをつけたままにしなければならないので、電気代だけでも数万円かかるそうです。それだけ日本酒をよい状態で保管するのは難しいのです。

彼が目指しているのも熟酒です。しっかり管理して10年後に自分の店で熟酒として出すのではないでしょうか。彼に言わせれば老香は特徴であって、劣化ではないとのことです。この感覚が現物投資の対象となる理由です。

普通の日本酒でも「4合瓶1万円」の時代が来る

日本酒はこれまで新たなジャンルがほとんど生まれていません。いま「熟酒」という新しいジャンルが生まれつつあることは、非常に面白いと思います。熟酒が広まってくると、「それにあう料理は何か」との発想が生まれます。

熟酒は、私たちが普段飲んでいる日本酒とはまったく異なり、重い味わいで匂いも色もまったく異なります。私は、こってりした料理に合うと思います。例えば中華料理と合わせる、あるいは西洋料理の肉と合わせるなどの提案ができるようになり、幅が広がるでしょう。

コース料理に合わせて最初は爽やかなものからスタートし、最後に熟酒を出す。そんな楽しみ方もできるはずです。

前述の黒龍のケースは極端ですが、すでに5万円程度の熟酒は普通にあります。1年を超えて貯蔵されたものを熟酒と呼びますが、一般的には5~10年貯蔵されたものが多いと思います。いま普通に飲まれている日本酒を10年貯蔵することで、4合瓶が1万円程度で販売される時代がくるかもしれません。

ジャパニーズウイスキーも10年ほど前まで普通に手に入るお酒でした。サントリーの白州は1瓶(700ml)3000円程度で入手できたと記憶しています。同様にニッカウヰスキーの竹鶴も手ごろに楽しめるジャパニーズウイスキーでしたが、いまお店で飲もうと思うと30ミリリットルで1杯7000円程度です。