台湾国営の中央通訊社でさえ、機動部隊を見かけた民間人のニュースや写真を頻繁に報じており、時には移動の詳細なルートや時期を伝えている。政府と軍のこうしたセキュリティー意識の欠如は、愚かであり自殺行為だと専門家は語る。
戦争が起きて思い知る
機動部隊は、最も機敏で追跡が困難な軍事要素の1つと考えられている。アメリカの評論家や国防総省は台湾に対し、ハープーンの購入と配備の強化を繰り返し促している。台湾が21年3月に発表した「4年ごとの国防総検討(QDR)」も、対艦ミサイルを「ステルス性と機動性があり、探知が困難」とされる「非対称」兵器の筆頭に挙げている。
しかし、これらの兵器も賢く運用されなければ、戦車や戦闘機などいわゆる通常兵器より脆弱になり得ると、ブラウン大学のライル・ゴールドスタイン客員教授は指摘する。「多くの人が、台湾の防衛戦略はこうした非対称兵器に依存していると考えているが、長距離精密誘導兵器の時代における台湾の大きな脆弱性を無視している」
現在の台湾政府と軍指導部に現実を直視する意思や能力がないことは、多くの兆候が示すとおりだ。海鋒大隊に関する中国の記事が公開されてから数週間、台湾ではほとんど注目されず、ごく一部のメディアが「プロパガンダ」として軽く触れただけだった。三大テレビのCTSは、「中国はわれわれのミサイルに怯えている」という国防部所属の「専門家」の発言を伝えた。
こうした傲慢さと、中国が強大化し続けていることを認めようとしない姿勢が国防部と国家安全保障のリーダーシップに蔓延していると、蔡英文(ツァイ・インウェン)前政権で国家安全会議の上級スタッフだった人物は匿名で語る。
「うまくいかない可能性があることは、全てうまくいかないだろう。そして、平時に既に敵にさらされている部隊は、戦争になれば壊滅するだろう。指導部レベルで根本的な変化が起きて、戦争をありのままに、私たちが望むようにはならないものとして対処するようにならない限り、戦争が起きて思い知ることになる」