台湾では二大政党の民進党と国民党が頻繁に政権交代を繰り返している。一体なぜなのか。ジャーナリストの野嶋剛さんは「民主主義が若い台湾では、有権者が選挙にかける思いが強い。選挙のためだけに世界中から台湾人が帰国するのもそのためだ」という――。
※本稿は、野嶋剛『台湾の本音』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
台湾は総統を国民の直接選挙で選ぶ
台湾の選挙システムについてもお話ししましょう。
李登輝が総統になると、憲法改正による政治の民主化が進み、1994年には総統を4年ごとに国民の直接選挙で選ぶことが決まり、1996年から新しい総統選挙が実施され、現在に至っています。2012年からは日本の国会議員にあたる立法委員選挙も同時に行われています。こちらも任期は4年です。
ちなみに、総統・立法委員選挙とも、当初は小さな政党も活躍していましたが、2008年に小選挙区制の選挙になってからは、国民党・民進党の二大政党制の色合いが強まりました(図表1)。
台湾には「世襲議員」がほとんどいない
その総統選挙の中間に、日本でもニュースで取り上げられた統一地方選挙が行われます。こちらも4年に1回です。市町村の首長から地方議員がこの選挙で選ばれます。統一地方選挙は、2年後の総統・立法委員選挙の行方を占う前哨戦の意味もあります。ただ、統一地方選挙で勝利した政党が総統選・立法委員選で勝てるかというと、そうではないところも面白いところです。
統一地方選挙では里長、日本でいえば町内会長のようなポストも選ばれます。台湾では、多くの政治家が里長、市議会議員、立法委員すなわち国会議員とステップアップしていきます。日本のような世襲議員は非常に少なく、2022年の台北市長選挙で蔣介石のひ孫・蔣万安が当選したのは大変なレアケースといえるでしょう。
台湾と日本の政治でどこが違うのかと聞かれたとき、私は「世襲」の多さを挙げることにしています。