その結果、女性管理職比率は徐々に向上し、11年は16.8%に達した。毎年1ポイントずつの増加というのは他の企業に比べてスピードは速いが、同社は満足していなかった。とはいってもこれ以上の上乗せは限界がある。他の日本企業も同様の努力はしているが、採用した女性を管理職に育成するには時間がかかるというジレンマを抱えている。女性の管理職を増やそうにも「ふさわしい能力と知識が身についていない」というのが、女性管理職比率が上がらない最も多い理由の1つになっている。
そこで同社が打ち出した戦略が、公募による「女性幹部募集」だった。募集職種は物販・商品企画のマーチャンダイズ部の部長職。募集期間は12年6月18日から7月17日までの1カ月。転職サイトのビズリーチに登録後に選考するというものであった。女性に限定した同社の幹部職の公募はメディアにも大きく取り上げられた。公募の狙いについて下村本部長はこう語る。
「管理職は一定の比率には達しましたが、次のステージに進むには社内の人材を育てていかないといけない。これには時間がかかります。転職エージェントを使って中途採用を行う方法もありますが、関西圏の管理職人材の市場は全体の10%程度であり、そのうち女性のマネジメント人材は0.5%という指摘もある。女性に活躍の場を提供したいという当社の方針を広く知ってもらうこと、もう1つはできれば部長以外に複数の女性幹部候補を採用し、育てていきたいと考え、公募に踏み切りました」
募集するマーチャンダイズ部の部長職は年間百数十億円の売り上げ予算を持つ部門の統括業務を担う。社員100人、クルー1000人を率いる重職だ。幹部社員の公募に加えて女性限定というのは、内部昇進制を基調に男性優位の企業風土が残る日本企業では考えられない芸当である。
下村本部長は「開業してから11年目であり、社員の多くが中途採用者。中途採用の延長ということで公募が社員に受け入れられる土壌はあった。とはいえ、男性社員が多い中で、女性に限定することを社員がどう受け取るのかについては多少気にはしていた。だが、戦略上、女性が必要であることは過去の取り組みでも社員は理解しているし、公募については私が社長に提案し、了承してもらった」と語る。