「風邪をひいていないのに咳が続く」には要注意
COPDの症状にはCOVID-19やマイコプラズマ肺炎と共通するものもありますが、見極める際に、発熱は1つの判断材料となります。COVID-19やマイコプラズマ肺炎は、いずれも発熱を主な症状とするのに対し、COPDにおいて発熱はみられません。しかしながら、COVID-19やマイコプラズマ肺炎も症状が表れる時期などによっては発熱を伴わないこともあり、病気を見分けるためには症状の詳細な観察と適切な検査が必要です。
特に40歳以上で喫煙歴があり、以下のような症状が見られる方は、COPDの可能性を疑い、医療機関での検査を検討してみてください。COPDは、呼吸機能検査(スパイロメトリー)やCT検査によって診断することが可能です。
1.風邪をひいていないのに咳が続く
2.粘り気のある痰が出る
3.階段の昇降時や歩行で同世代に比べて息切れが見られる
4.呼吸をするとき、ゼイゼイ、ヒューヒューと音がする
「加熱式たばこならCOPDへの影響は少ない」は本当なのか
2020年に施行された改正健康増進法により、公共の場での喫煙が厳しく制限されるようになりました。昭和40年以降のピーク時には83.7%あった成人の喫煙率は、2022年には14.8%と大幅に減少しています。2014年頃から、加熱式たばこが普及し始め、現在も喫煙者の主流は紙巻タバコですが、男性で30.1%、女性34.4%の方が加熱式たばこを使用しています。特に、20歳~30歳代の喫煙者では約40%以上が加熱式たばこを使用しているというデータがあります(厚生労働省「令和4年国民健康・栄養調査結果の概要」)。
加熱式たばこは、紙巻たばこよりもCOPDへの影響が少ないと予測されますが、実際のところはどうでしょう。関連する研究データの1つに、紙巻たばこから加熱式たばこに切り替えることで、紙巻たばこの喫煙をやめた又は大幅に減らしたCOPD患者の健康パラメータを3年間にわたって観察した追跡調査があります。
1日20本程度の紙巻たばこを吸っているグループと、加熱式たばこに切り替えて紙巻たばこを1日数本吸うグループに分け、年間の疾患増悪回数、肺機能指数、患者報告アウトカム(CATスコア)、6分間歩行距離(6MWD)のベースラインからの変化を、12、24、36カ月時点で測定しています。結果、加熱式たばこに切り替えたグループにおいては、呼吸器症状、運動耐容能、QOLおよび疾患増悪回数の一貫した改善が見られました[Riccardo Polosa et.al “Health outcomes in COPD smokers using heated tobacco products: a 3-year follow-up” Intern Emerg Med. 2021 Apr;16(3):687-696.]。