あなたは激しい咳が長く続き、夜も眠れない状態が続いてはいませんか――。

この咳は痰を伴わない乾いた咳。痰が出る場合は白っぽい痰。高熱を伴う、もしくは微熱と、熱の症状も人それぞれ。

これは若い人々に増えている「マイコプラズマ肺炎」。重症化し、入院するケースもあるが、そこまで重症化するのは高齢者が多い。

マイコプラズマ肺炎の原因はマイコプラズマ病原体。この病原体に感染すると、約3週間後に激しい咳などの症状が出る。感染ルートは咳による飛沫感染のほか、接触感染がある。感染力は強いものの、感染したからといって必ず発症するわけではなく、そのときの体調が大きく左右する。ほとんどの人は上気道炎といって、のどに炎症を起こす程度だが、10~15人に1人が体調の悪さから発症してしまう。

この段階で的確な治療を受けると問題なく治るが、なかには風邪、インフルエンザ、ほかの肺炎と間違えられたりすることがある。重症化すると「髄膜炎」「副鼻腔炎」「中耳炎」などを起こすこともあるので、咳を侮ってはいけない。

このマイコプラズマ肺炎は肺炎のひとつ。一口に肺炎といっても実は多くの種類がある。

そしてなんと、日本人の死因の第4位は肺炎である。2009年には11万2004人が亡くなっている。その多さとともに、もう一点認識しておかねばならないのが、死亡者の95%が65歳以上の高齢者ということである。さらに、60歳以上の肺炎患者の約45%は、肺炎球菌が原因の「肺炎球菌性肺炎」。これはほかの肺炎よりも重症化しやすい。

そのため、「65歳以上の人」「慢性閉塞性肺疾患(COPD)など呼吸器疾患のある人」「糖尿病、心臓病、腎臓病、肝臓病などの慢性疾患のある人」「膠原病、関節リウマチなどでステロイド薬や免疫抑制剤を長期間服用中の人」「がん患者」などのリスクの高い人には、肺炎球菌ワクチンの接種が勧められる。インフルエンザ同様、ワクチンで予防できるのであればしっかり対応すべきだろう。

肺炎球菌ワクチンは1回接種すると約5年間有効。09年10月からは、一生に1回の接種ではなく、再接種が認められている。あくまで予防なので保険適用はなく、自己負担。ただし、自治体で公費助成するところが現時点で約400市区町村と増えているので、自分の住んでいる町で助成の有無を確認してみるといい。もし助成していなかったとしても、前述したようにリスクの高い人はワクチン接種を受けておくほうがいいだろう。インフルエンザの流行時季であれば、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの同時接種も可能である。

さらに、誤嚥性肺炎にも気をつけなければならない。通常、空気は気管に入り、飲食物は食道に入るよう、嚥下機能によってスムーズに分けられている。ところが、風邪などの回復段階に飲食物が誤って気管に入ってむせてしまい、そのときに細菌などが入ると誤嚥性肺炎を起こすことがある。脳梗塞の後遺症があるような人はより起こしやすく、命取りにもなりかねないので十分な注意が必要である。風邪の回復段階ではとろみのついた食事がお勧め。飲み込みやすいので誤嚥を防ぐことができる。

【生活習慣のワンポイント】

肺炎もインフルエンザ同様に、まずは「手洗いとうがいを徹底して行う」。そのほか、「マスクをする」「感染がわかったら治療を受け、安静にする」。特にマイコプラズマ肺炎は約1カ月近く他人にうつす可能性があるので、症状が改善しても医師の指示通りに薬をしっかり服用しよう。

そして、免疫力を少しでもアップすべく、規則正しい生活、栄養バランスのいい食事、十分な睡眠、ストレスの解消などを実践する。また、持病のある人はしっかりコントロールすべきである。