年中行事ともいうべき、インフルエンザのシーズン到来――。
昨シーズンは新型インフルエンザが短期間に世界を席巻。“パンデミック(世界的大流行)”という言葉も一般化してしまった。日本では2009年5月に最初の感染者が確認された後、昨シーズンは約2060万人が感染。インフルエンザ感染者の98%を占めた。
感染者は多かったものの症状が軽く、死者は10年6月末時点で200人。人口10万人に対する死亡率は0.15。アメリカが3.96、カナダが1.32、メキシコが1.05、ドイツが0.32などで、欧米と比較しても日本のそれはきわめて低いのがわかる。死亡者は半数以上が40歳以上の人で、「喘息」「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」「糖尿病」「心臓病」などの基礎疾患を持っていた。
では、今シーズンは――。10年9月以降、学級閉鎖などが断続的に多発し、11月には秋田県の病院で8人の患者が死亡。これらはA香港型による集団感染とみられている。12月上旬の時点で、今シーズンはA香港型66%、新型30%、B型4%という状況で、昨シーズンのように新型一色といった傾向にはない。
今シーズンのワクチンは流行をピタリと当てて、新型、A香港型、B型の3種を混合したものとなっている。昨シーズン前は新型と季節性のワクチンの2度接種が行われたが、今シーズンは一度で済む。
もちろん、ワクチンを接種すれば100%大丈夫というものではない。重症化を抑える一定の効果があると理解すべきであろう。その効果は、70~80%といわれている。
ワクチンを接種している、していないにかかわらず、インフルエンザに感染したときは、発症後できるだけ早く受診し、治療を受けるのがよい。実際、日本の昨シーズンの重症者、死亡者が世界的に最も少なかったのは、医療機関を早期に受診し、抗インフルエンザ薬を積極投与したためと分析されている。
その抗インフルエンザ薬はウイルスの増殖を抑える薬で、発症後48時間以内に使うのがポイント。内服薬の「タミフル」と吸入薬の「リレンザ」が有名だが、これに点滴注射薬の「ラピアクタ」が加わった。タミフルやリレンザが使えない患者などに使われる。
基本的にインフルエンザは風邪症候群の一つではあるが、症状も感染力も一般の風邪とは大分違いがあるため、特別に扱われている。
特徴的な症状は、風邪の発熱が37度程度なのに対し、インフルエンザは38度以上になる。そのほか、「関節痛」「筋肉痛」「頭痛」といった全身症状がある。素早い対応をこれまでのように心がけるのが大事である。
【生活習慣のワンポイント】
インフルエンザに感染しないためには、「手洗い」「うがい」をきちっと行う。外出していてなかなか手洗いができないときは、携帯用の消毒用アルコールジェルなどを使うとよい。
さらに、マスクを常に携帯し、インフルエンザに感染している人に近づくときは着用する。そして、人込みを避け、規則正しい生活で体調維持に努めよう。
最近、ビタミンDがインフルエンザ予防に効果があるのでは、という研究が報告された。ビタミンDは丈夫な骨づくりに不可欠なだけではなく、丈夫な粘膜をつくるのにも欠かせない。日照時間が短い冬場は、日光を浴びることでつくられるビタミンDの量が少なくなる。それがインフルエンザの感染と関係しているのではないかというのである。ビタミンDが多く含まれている干し椎茸、サケ、ウナギ、サンマ、イクラ、シラス干しなどを積極的に食べよう。
それでも感染してしまったときは、治療を受けて家で安静にする。家族への感染を防ぐために一人部屋で過ごすのがベストである。