医療は体にメスを大きく入れる手術から、より体にやさしい治療へと進んでいる。

今年1月1日から、また体にやさしい治療に健康保険が適用となった。その治療は下肢静脈瘤に対してレーザーを用いて行う「血管内レーザー療法(EVLA)」。昨年までは自由診療で行われていたため、治療費は約15万~30万円程度かかっていたが、これが約5万円になったとあって、血管内レーザー療法を選択する患者が増えている。

下肢静脈瘤とは、脚の静脈に逆流が起こり、そのためふくらはぎや、それより内側の血管がモコモコ、グリグリと盛りあがってしまうもの。女性は血管の異様な盛りあがりで見た目を気にするが、それ以上に症状に辛いものがある。「脚が痛い、重い、だるい」「脚がむくむ」「脚がつる」などの症状で、睡眠が十分とれない人もいる。

その下肢静脈瘤は4分類されているが、最も重症なタイプが「伏在型」。下肢には中心部にあって主要な働きをする「深部静脈」と、皮下にあって補佐的な働きをする「表在静脈」がある。表在静脈には「大伏在静脈」と「小伏在静脈」があり、これらが直径8ミリ以上に拡張するのが伏在型である。

保険が適用されたのはこの伏在型に対する血管内レーザー治療である。これまでメーンの治療は保険が適用されるストリッピング術であった。ストリッピング術は脚の付け根と膝の2カ所を切開して、太ももの悪化した静脈を抜去する。つまり、静脈を手術で取り除くのである。さらに、モコモコとした膝から下の静脈には注射で硬化剤を入れ、二次的に血管に炎症を起こして静脈を閉塞させる硬化療法で対応する。

一方、血管内レーザー治療は局所麻酔をして膝の内側から静脈に細い針を刺し、その針はりあな孔から細いレーザーファイバーを挿入する。そこでレーザーを照射して内側から静脈をふさいでしまうのである。静脈を引き抜かないので、手術で起こる出血や術後の痛みがきわめて少なく、その点でも体にやさしい治療である。

このようなカテーテルを使ったレーザー治療は1998年にスペインの医師が始め、日本では2002年から行われている。日本での治療だけを見てもすでに約10年の歴史があり、5年後の成績ではストリッピング術などの他の治療より約15~20%も良い結果がでている。

体にやさしい血管内レーザー治療は日帰りで行っている施設もある。ただし、レーザー治療がすべて保険適用になるのではない。薬事認可されたレーザーで治療を行い、治療する医師はレーザー治療の講習を受けていることが条件となる。

【生活習慣のワンポイント】

下肢静脈瘤患者の男女比は1対4で圧倒的に女性に多く、年齢的には40歳以上に多くなる傾向が強い。職業ではデパートの売り場で働く人や美容師、看護師などの「立ち仕事」の人、また逆に1日中パソコンに向かって仕事をしているような「座り仕事」の人に多い。

立ち仕事でも、リズミカルにウオーキングをしているのではないため、脚がしっかりと“第二の心臓”の役割をはたしていない。つまり、脚に静脈血がたまり気味になるのである。

スムーズな血液循環が大事なので、以下の4点は必ず実践しよう。

(1)立ち仕事の人は15分のリズミカルなウオーキングを1日2回は行う!

(2)座り仕事の人は、40分に10分は休憩をとる! この場合の休憩とは、ウオーキングやストレッチをして脚の筋肉を伸ばすことである。

(3)眠るときは少し脚を高くする! 脚のむくみがとれる。

(4)お風呂には必ず入る! お風呂に入ると水圧がかかり、四肢、腹部、皮膚などの静脈血が心臓へ向かう。静脈還流が増えるのである。