症状を自覚したときには進行しているケースが少なくない
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを経て、今年はマイコプラズマ肺炎が8年ぶりに大流行するなど、呼吸器の健康に対する関心が高まっています。近年、世界的にも呼吸器疾患は増加しており、その中でも特に注目されているのが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)です。
COPDはタバコの煙(副流煙を含む)を主とする有害物質を長期間吸入することなどにより肺に炎症が起き、肺胞が破壊され呼吸がしづらくなる疾患です。初期には症状がなくゆっくりと進行するため、咳や痰、息切れなどを自覚した時には病気がかなり進行しているケースも少なくありません。一度壊れてしまった肺胞は再生することができません。そのため、息苦しさや痛みから日常の活動が制限されることが多くなります。
さらに、症状が長く続くと食欲や免疫力も低下し、心血管疾患や腎疾患などの合併症のリスクが高まるとともに、症状や生活の質の低下等の影響から20〜50%の患者にうつ症状が合併すると考えられています。進行すると、酸素吸入が手放せなくなることもあり、自立した生活が難しくなることがあります。
今回はCOVID-19やマイコプラズマ肺炎に罹患するとリスクが高まると言われている、COPDに注目してお話ししたいと思います。
長年の喫煙によって発症する病気
世界保健機関(WHO)によると、COPDは2020年には世界で3番目に多い死因であり、日本においては近年死因としての順位は下げているものの、2022年の死亡者数は1万6676人に及んでいます。COPDは主に長年の喫煙によって発症する病気で、特に20年以上の喫煙歴がある場合にリスクが高まります。過去の喫煙率の影響を受け、2010年以降COPDは日本の死因ランキングで9位になりましたが、喫煙者数の減少に伴い、2014年からは順位が下がっています(「COPDに関する統計資料」COPD情報サイト)。
2001年に発表された大規模疫学研究NICE studyの結果によると、日本人の40歳以上におけるCOPD有病率は8.6%、患者数は約530万人と推定されています。しかしながら、病院でCOPDと診断された患者はわずか22万人程度にとどまっており、多くの方がCOPDであることに気づいていない、あるいは正しく診断されていない現状が浮き彫りになっています(「COPDに関する統計資料」COPD情報サイト)。