「スマホで調べて自己診断」はやめたほうがいい

今はスマホを持っていれば、よくも悪くもなんでもすぐに調べられます。私は腰がウィークポイントで、毎年春には決まってぎっくり腰をやってしまうし、ふいに腰痛に悩まされることもあります。

腰痛対策を知りたいと思ってネットで検索をすると、内臓疾患やがんの可能性を指摘する記事を目にすることになるでしょう。これらの言葉を目にして、不安になるなというほうが無理。

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「もしかしたら病気かも⁉」という不安感は大きなストレスですし、自律神経のバランスも崩れ、不調をさらに深刻なものにしたり、長引かせたりする要因になります。

便秘外来の患者さんでも、「3日おきにしか便が出ないし、お腹が痛いのは悪い病気じゃないだろうか」と不安な気持ちを抱えて来院する方が少なくありません。

「大丈夫ですよ。3日に1回便通があるならそれは便秘じゃないですよ」と私がお伝えしただけで、お腹の痛みも便秘も解消してしまう人は、一人や二人じゃありません。不安を解消しただけで自律神経のバランスが整い、体調もあっさり回復してしまうのは、本当によくある話なのです。

実際、不調の沼をどんどん深くしてしまっているのは自分自身だったりします。自分自身は不調を感じていても他人から見てそうではないときは、自分の思い込みである場合が少なくありません。

実のところ、医師の私でもそうでした。本書(『病院に行くほどではない不調に医師がしたこと』)の序章でもお話ししたように、不調の底にいたころ、何人かに「小林、大丈夫か?」と声をかけられ、自分の健康にすっかり自信をなくしかけていました。

不安が増幅して“悪いほう”へ流される

その当時、滑舌の悪さや声のかすれが気になっていて、これは何か病気のサインではないかと思い耳鼻科にも行きました。そうしたら、「小林先生、それはただの老化ですよ」と言われてしまった(笑)。

病気ではないことに安心はしたけれど、やっぱり、気になる。だから、私が普段いるオフィスと同じ階にいる、今は漢方医学の指導医をしている大学の同級生の女性に、「滑舌が悪くなっちゃったんだけど、何かいい漢方薬はない?」と相談したんです。

そうしたら、ニヤッと笑って、「小林君、滑舌が悪いのは昔からだよ。別に前と変わってないよ」だって(笑)。

同級生のこの言葉で、自分にまとわりついていた不安が一気に吹っ飛びました。そうそう、私は昔からモゴモゴと喋るクセがあって、けっして滑舌のいい人間ではなかった。

だけど、体調が底の状態で、人から「大丈夫?」と心配されて、勝手に滑舌の悪さを不調と結びつけていたのは自分だったんだと、ようやく目が覚めた。

医療知識を持つ医師でも、悪い流れにいるときや体調不良のときにこうなるのだから、あなたも自己診断は危険です。

どんどん不安が勝手に増幅して、思考も体も悪いほうへ悪いほうへと流されてしまいます。そうなる前に、不安が大きいようなら受診をして、医師の診断を仰ぐことも視野に入れましょう。

あきらかにいつもとは違う痛みや、直感的にこれはマズイなと感じる症状があるときには、すぐに受診を。痛みなど症状が日増しにひどくなる場合には3日以内をめどに受診を。我慢できないほどではなくても同じ症状が2週間続いている場合にもやはり受診を。

基準を明確にしておくと、取り返しがつかない事態になる前に、解決へと舵を切ることができます。