日本はこの4つを何とか成立させている

「例えば、Economic Efficiencyというのがあるよね。誰にでも払える電気代で提供することが大事ってこと。それだけを考えたら、多分一番安い発電の方法は、石炭を燃料に使う石炭火力発電なのね。石炭は結構いろんな国にあって、安価で入手しやすいエネルギー資源だったよね。でも、石炭を使うと二酸化炭素がとてもたくさん排出されて、Environment、つまり環境に配慮した、とか脱炭素っていうのが成り立たなくなる」

「じゃあ、再生可能エネルギーをたくさん使えばいいんじゃない?」とモコ。「そうね。でも、今はまだ、日本には再生可能エネルギーは、みんなに必要な電力を賄えるほど十分にはないから、Energy Security、つまり安定的に電力を届けるってことが成り立っていない。それに、石炭と比べると再生可能エネルギーでつくる電力は、今の時点ではまだ値段が高いの。

おまけに、お日様任せ、風任せで、電気をつくる量がうまくコントロールできないから、必要な時に電力が足りなくなったり、必要のない時にたくさん電気ができたりっていうことが起こるの」

「安定供給できないってことですね」

“夢のエネルギー”だった原子力も議論が再燃

「そう。2011年、福島の原子力発電所の事故が起こるまで、原子力でつくる電力は二酸化炭素も出さないし、発電コストも安いし、燃料も将来的にはリサイクルして使えるから、日本のように資源のない国にとってはとても望ましい方法だと考えられていたの。

関口美奈『13歳からのエネルギーを知る旅』(KADOKAWA)

“夢のエネルギー”なんて呼ばれていたわ。だけど、大きな事故が起こって、人々は原子力発電のSafety、安全性への不安を募らせるようになってしまった。原子力発電については、とても大事な話だから別の対話で旅をしたいと思っているわ」

エナジーは一呼吸おいて、こう締めくくった。

「つまり、この4つの大事なことは、このうちの2つ以上の条件を同時に成立させることがそんなに簡単じゃないっていう特徴があるの。今、地球上の国のほとんどが同じ問題を抱えている。そして、この4つの大事なことを共有し、それぞれの国が持っている資源をやり取りしたり、共同で技術開発することを通じて、難しい課題に協力して挑戦しようとしているのよ」