安定供給、安全輸送、そして低価格

「これは、家や学校、会社、工場、そして、電車、駅、病院などの公共の場も含めてエネルギーを毎日問題なく使うことができるようにするために大事な4つのことを表しているの。それぞれの頭文字をとって、S+3Eよ。

まず、最初がSafety(セーフティー)ね。石油やガスの採掘、生産、輸送の時には、安全に対する配慮が必要なの。取り扱いを間違えれば、タンカーから石油が漏れて海を汚染して、魚が死んで生態系を崩してしまうし、引火などしようものなら大事故になるわ。エネルギーを使って発電を行う発電所も同様ね。発電所は、さまざまな高度な技術を使うものが多いの」

エナジーは、さらに続けた。

「2つ目、Energy(エナジー)Security(セキュリティー)は社会生活や経済活動が停滞しないように、安定して資源国からエネルギーを輸入し、国内に供給すること。エネルギー安全保障とも言うわ。3つ目のEconomic(エコノミック) Efficiency(エフィシェンシー)は、みんなが電気代として払える価格でエネルギーを提供すること。

例えば、電気代が高くなりすぎて払えなくなったとしたらどうなるかしら?」

「え? 電気、止められちゃうの? 明かりもつかないし、ごはんも炊けないし、テレビだってもちろん見られなくなっちゃうよ」

部屋の照明
写真=iStock.com/Artit_Wongpradu
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一つ一つは当たり前のことだが…

「それ以外にも、凍えるほど寒くたって暖房は使えないし、暑くて熱中症になりそうでも冷房も使えない。冷蔵庫だって使えないから食べ物の保存ができない。そんなことになったら便利か不便かってレベルの話じゃなくて、人の生死にかかわるわよね。だから、エネルギーや電力は、なるべく価格を抑えておく必要があるのよ。

最後はEnvironment(エンバイロンメント)。もともとは、環境に優しいとか、環境に配慮したっていう程度の意味合いだったけど、今では、気候変動を止めるために、脱炭素とか二酸化炭素を排出しないエネルギーの方が望ましい、という意味合いの方が強くなってきたわね」

「この4つのことが大事だっていうのはよく分かりました。でも当然といえば当然のことのような気もするんです。なぜここで、あえてこの4つが大事だってことを強調するんでしょうか?」

たいがい、大事なことというのは当たり前のことが多い。カイトの発言は素朴な疑問だった。

「いいポイントに気がついたわね。そうなの。それぞれ単独で見てみれば、大事なことなのは一目瞭然。でもね、この4つが同時に成り立つようにすることを考えてみたらどうかしら? それは、そんなに簡単なことじゃないのよね」
「それはどういうことですか?」