大手電力会社による不祥事が相次いでいる。京都大学の竹内敬二特任教授は「電力市場の自由化に抵抗し、『地域独占時代』に押し戻そうとしている表れだ。特に悪質なのは、日本の発電の8割を担う強い影響力を利用した卸し電力市場の価格操作だろう」という――。
電気料金の値上げのイメージ
写真=iStock.com/Galeanu Mihai
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「カルテルが電気代を上げているのでは?」

電力7社(北海道電力、東北、東京、北陸、中国、四国、沖縄)が6月から電気料金を上げた。各社で15~39%と大幅だ。経産省は値上げ幅を圧縮したが、それでも大幅なので消費者の反発は大きく、審議では消費者庁から「カルテルなどの不祥事が値上げを押し上げているのでは」として調べるよう注文がついた。電力業界は大いにプライドを傷つけられたことだろう。

この「カルテルなどの不祥事」とは次のようなものだ。

①カルテル

3月30日、公正取引委員会がその処分を公表した。2018年から関西電力が中部電力、中国電力、九州電力などと協議し、各社はそれぞれ旧来のエリア内での営業にほぼとどめるように合意していた。いわゆるカルテルだ。電力価格のつり上げや新規参入会社である「新電力」を排除するような操作も行っていた。後で詳しく述べる。(カルテルに関わったのは関西電力、中部、中国、九州)

ライバル会社の顧客情報を「盗み見」

②不正閲覧

これもやはり関西電力から経産省への自主的な報告があって明らかになった。大手電力会社には「発電部門」「送配電(送電線)部門」「小売り部門」がそろっている。電力自由化が進む中で2020年、「送配電部門」が法的に分離された(例えば関電では「関西電力送配電」という子会社になった)。これを「発送電分離」と呼ぶ。

一方、16年以降「新電力」と呼ばれる小売会社がたくさんできた。この新電力と「大手電力の小売り部門」はライバル関係にあるが、大手の小売り部門の社員が、自社の送配電部門(例えば関電送配電)が仕事で知り得た新電力の顧客情報を見ていたのである。公平な競争のため情報遮断が決められているので「盗み見」だ。