公取委が問題視した「情報交換会」

この形の合意は、関電と中国電力の間だけでなく、「関電と中部電力」「関電と九州電力」との間でもなされていた。官公庁などを対象にするなど内容は少し異なる。これらの合意が守られると「お互い他社のエリアの大口顧客や官公庁との契約を制限し、自社エリア内でほぼ独占的に営業する。そしてその電力料金は下げないようにする」となる。営業区域・顧客と利益をお互いに守る合意だ。典型的なカルテルである。公取は「合意破棄」などの排除命令を出した。

話し合う3人のビジネスマンのシルエット
写真=iStock.com/shironosov
※写真はイメージです

公取命令で注目すべきは、「電気事業連合会に対する申入れ」と「電力・ガス取引監視等委員会に対する情報提供」という項目だ。電事連や電取委に伝えながら「大手電力はこんなことをやっていた」と不正の内容を社会にも広く知らせている。書き下して書くと次のような内容になる。

まず大手電力はカルテル・独占禁止法違反につながるような情報交換を日常的に行っており、とくに電事連がその土壌をつくっている。「電事連の種々の会合や、電事連に出向したときに構築した人脈のもとで行われている」。公取は電事連に対し、カルテルにつながるような情報交換会をなくすよう求めている。

自由化、競争の時代になった今でも大手電力同士の結びつきは強く「区域外の営業活動を行う際に、その区域の大手電力に『仁義切り』などと称して情報交換を行うことが慣例化していた」と指摘している。前もってあいさつ、情報交換をすることだが、それにしても「仁義を切る」とはどこの世界の慣習なのか。

市場への電力供給を出し渋る新電力いじめ

公取が指摘する中で最も悪質なのは、卸し電力市場の「価格操作」だろう。

大手電力は日本の発電の8割を担う圧倒的な影響力をもつ。その力を利用して、「市場への電力供給を出し渋って卸し市場を枯渇させる」「そうやって価格つり上げなど価格操作を行う」「自社の販売子会社に電力を卸す価格を、新電力に卸すよりも安くしていた」などの行為が書かれている。さらに新電力の契約情報を盗み見する……。これらは明らかな不正であり、新電力いじめだ。自由競争も何もあったものではない。

公取報告を見ると大手電力がやりたいことが分かる。①地域独占時代のように自社エリアでの独占的営業をしたい、②その価格の低下を抑えたい、③新電力を抑え込みたい。