2022年12月から政府は7年ぶりとなる冬の節電要請を行っている。国際大学の橘川武郎教授は「石炭火力の活用によって最低限の安定供給は確保されたが、東日本はギリギリの状況だ。しかも、電力危機克服策として石炭火力が再評価されていることは、決して喜べることではない」という――。
見出しに踊る「節電」の文字
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「今冬の電力危機」は本当に起きるのか

2022年7月17日にPRESIDENT Onlineで発表した拙稿〈より深刻な電力危機は、この夏よりも「冬」である…日本が「まともに電気の使えない国」に墜ちた根本原因〉の中で、「電力危機は、間違いなく2023年1〜2月の東日本で正念場を迎える。それへの有効な対応策は、今のところ節電しかない」、と書いた。そして、その根拠として、政府が電力危機対策として力を入れる原子力発電(原発)の活用拡大の成果には限界があるとの見通しを示した。

いよいよ、問題の23年1〜2月がやって来る。22年7月の時点に比べて、電力危機の度合いが多少緩和されたことは、事実である。しかし、政府の対応の不作為を含めて、問題の基本的な構造は、何も変わっていない。

図表1は、22年12月16日の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(以下、基本政策分科会)で資源エネルギー庁が開示したものであり、6月時点と12月時点の電力供給の予備率に関する見通しの変化を表している。最上段の「12月」「1月」「2月」は、それぞれ「2022年12月」「2023年1月」「2023年2月」を意味する。

【図表】電力供給の予備率見通しの変化

供給予備率は改善したが、安心はできない

この図表1からわかるように、22年6月時点での見通しでは、23年1、2月の電力供給予備率は東京ではマイナス、西日本(中部〜九州)では1〜2%台となり、安定供給に最低限必要とされる3%を下回っていた(図表1中の黄色部分)。東北でも、予備率は3%そこそこにとどまった。

それが、22年12月時点の見通しになると、23年1、2月の電力供給予備率は西日本では5〜6%台に乗り、東日本(東北および東京)では4%台となった。電力危機の度合いは緩和されたが、東日本の4%台という数値は、けっして安心できる水準ではない。