賃金上昇の恩恵を受けたのは飲食・宿泊業
賃金上昇の動きはどういったところから広がっているのか。
まず、業種別の賃金上昇率の比較をしてみよう。図表3は各業種の時給(名目)水準について2013年から2023年の変化を算出したものである。
この10年で時給が最も増加した業界は飲食・宿泊業である。2013年の1201円から2023年には1489円と、10年間で24.0%増と上昇している。建設業(2163円→2623円、21.3%増)や卸・小売業(1948円→2271円、16.6%増)、運輸・郵便業(1984円→2263円、14.1%増)も堅調に増加している。
一方で、賃金上昇率が相対的に鈍い業種も存在している。教育・学習支援(3012円→3032円、0.7%増)、金融・保険(3185円→3391円、6.5%増)、医療・福祉(2172円→2335円、7.5%増)などである。この中でも特に医療・福祉は就業者数が多く、全体の賃金の趨勢に与える影響が大きいが、賃金の上昇率は相対的に鈍い水準にとどまっている。
この10年、地方の賃金が伸びている
続いて、都道府県単位で時給(名目)水準の推移をみたものが図表4になる。
横軸が2013年時点の時給水準、縦軸が2013年から2023年にかけての時給水準の変化率を取っている。これをみると、この10年間で最も時給が上がった都道府県は北海道だった。2013年の1804円から2023年には2151円まで上昇している。10年間の上昇率は19.2%。
そのほか、岩手県(1720円→1981円、15.1%増)、大分県(1739円→2028円、16.6%増)、鹿児島県(1655円→1900円、14.8%増)、山形県(1773円→2036円、14.9%増)などもともとの時給水準が低かった都道府県が賃金の伸びが強い傾向にあることがわかる。
一方で、大都市圏では賃金上昇率は実はそれほど高くない。愛知県(2274円→2558円、12.5%増)は全国平均より上昇率が高いが、東京都(2808円→3091円、10.1%増)や大阪府(2318円→2576円、11.2%増)や神奈川県(2339円→2591円、10.8%増)などにおいてはそこまで伸びていない。