自ら非正規を選んでいるなら問題はない

「正規の職員・従業員の仕事がないから」非正規雇用の仕事についたという人の比率は調査開始時の2013年の17.9%から2023年には9.2%へと減少している。自分の意思に反して非正規雇用で働く者の数は大きく減少しているのである。

非正規雇用という働き方は、分類上同一の非正規雇用であっても、その内実は多様である。現代においては、女性や高齢者を中心に正社員としてフルタイムで働くよりも、短時間の仕事で働きたいと考える人は多い。

家計上それでも問題がないのであれば、非正規雇用という働き方を積極的に選ぶというのは家計の合理的な選択である。一方、本来は正社員として働きたいのに、働き口がないから非正規にやむを得ずつかざるを得ないという人が増えることは問題である。

こうした観点で現在の非正規雇用者の労働市場を概観すれば、不本意非正規が急速に減少しつつ、それと同時に女性や高齢者など自らの意思で短い労働時間で働きたい人が増えているという状況が近年の潮流であることは明らかだ。

非正規・パートの時給は右肩上がり

過去、日本の労働市場は労働力の買い手に有利な環境が長く続いてきたことから、企業は賃金単価の低い非正規雇用者を大量に活用する戦略を取ってきた。そして、その結果として労働力の売り手である労働者の一定数は、不本意にも非正規雇用として働かざるを得ない状況に追い込まれた。

こうした過去から振り返ると、足元の労働市場の環境は明らかに変化していることがわかるのである。

非正規雇用者の処遇改善も進んでいる。雇用形態別に賃金の推移を調べてみると、正規雇用者よりも非正規雇用者の方が賃金上昇のスピードが速い。図表3では厚生労働省「賃金構造基本統計調査」などから、一般労働者でかつ正規雇用者、一般労働者でかつ非正規雇用者、短時間労働者の賃金を比べている。

この区分はそれぞれ、概ねフルタイムの正社員、概ねフルタイムの契約社員や派遣社員、パート労働者に対応している。