「人事異動もあり、格差は不合理とまではいえない」と判断

正規雇用と非正規雇用の労働者の待遇格差をめぐる最高裁の判決が先週、相次いだ。

日本郵便非正規格差をめぐる訴訟で「勝訴」の垂れ幕を掲げる原告団=2020年10月15日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
日本郵便非正規格差をめぐる訴訟で「勝訴」の垂れ幕を掲げる原告団=2020年10月15日、東京都千代田区

10月15日には、郵便局で配達に就く契約社員たちが年末年始の待遇などについて正社員との格差是正を求めた3件の訴訟(上告審)で、最高裁第1小法廷は「不合理な格差があり、違法だ」として手当や特別休暇などをすべて認める判決を下した。日本郵便にいる18万5000人の契約社員の待遇格差が是正されることになる。

13日にも待遇格差の是非が争われた2件の訴訟(上告審)の最高裁判決があった。大阪医科大(現・大阪医科薬科大)の元アルバイト職員への賞与と、東京メトロ子会社の「メトロコマース」の元契約社員に対する退職金の格差について、最高裁第3小法廷はいずれも「正規労働者は業務の難易度が高く人事異動もあり、格差は不合理とまではいえない」と判断。賞与や退職金の支払いを命じた高裁判決を覆して、訴えを退けた。

日本郵便の判決は非正規側の勝訴だったが、大阪医科大と東京メトロ子会社の判決は非正規側の敗訴だった。

「待遇格差の是非は個別に判断すべき」との2年前の判決を踏襲

最高裁の判断はなぜ分かれたのか。15日と13日の判決は2年前の2018年6月に最高裁判決を踏襲したものとみられる。2年前の判断はこんな趣旨だった。

「待遇の格差が不合理かどうかは、手当や特別休暇などの項目ごとに個別に判断すべきだ」

つまり、非正規労働者の働き方と経営側がその待遇項目を設けた趣旨はそれぞれの企業によって事情が異なり、個別に判断する必要があるとしたのである。

たとえば、15日の判決では年賀状の配達で多忙な年末年始の勤務手当については「郵便局で忙しいのは非正規も正規も同じ」と考え、「正規労働者に特有な支給ではない」と判断した。

これに対し、13日の判決では退職金や賞与を労働の対価という趣旨だけではなく、「期待する正社員に長く働いてもらいたい」という経営側の判断を尊重したもので、仕事の内容の違いも前提にされ、待遇格差を不合理とはしなかった。