全労働者の4割近くが「非正規」となっている現実
ここで最近の雇用問題を簡単に振り返ってみよう。
バブル経済の崩壊後の長引く不況の結果、2000年代に各企業が正社員に代わる契約社員やアルバイトなどの非正規雇用の形態を導入する動きが活発化した。さらに2008年~2009年のリーマン・ショックが追い打ちをかける形で、非正規労働者の生活困窮が大きな社会問題となった。
問題を少しでも解決しようと、不合理な待遇格差を禁じる旧労働契約法20条が創設され、今年4月には「同一労働同一賃金」を定めたパート・有期労働法が施行された。今回の最高裁の判断は、この同一労働同一賃金の考え方に立っている。
2019年の非正規労働者は、全労働者の4割近くにも相当する2165万人に膨れ上がっている。待遇格差の是正は、間違いなく解決しなければならない重要課題である。
そこで沙鴎一歩はこう主張したい。企業にとって労働力となる社員は貴重な宝であり、財産だ。正規だろうが、非正規だろうがそれは変わらない。同一労働同一賃金を前提として、経営側には待遇格差をなくす努力をしてほしい。
自由・資本主義社会ではどうしても勝ち組と負け組が生まれる。それゆえ労働者が一方的に搾取されるような事態には手だてが欠かせない。
「労働条件の透明化」と「処遇の改善」を求める産経社説
10月17日付の産経新聞の社説(主張)は、最高裁の判決についてこう訴える。
「一連の判決は、正社員と非正規社員という就業形態の違いで、一律に待遇に格差をつけることは認められないとの立場を示したものといえる。企業は今後、非正規社員に対しても職務を明確化し、待遇などの労働条件の透明性を確保することが求められる」
「今年4月からは政府の働き方改革の一環で『同一労働同一賃金』のルールも施行された。非正規社員の処遇を着実に改善する取り組みが欠かせない」
非正社員の「労働条件の透明化」と「処遇の改善」を求めるこの産経社説に、沙鴎一歩は賛成する。どちらかと言うと、企業側の肩を持つことが多かった産経社説にしては珍しい主張だと思う。
最後に産経社説はこう訴えている。
「日本の非正規社員の賃金は正社員の6割程度にとどまる。8割程度の欧州と比べると、その差は大きい。とくにコロナ禍の今は、非正規社員がこれまで以上に雇用調整の対象になりやすく、待遇改善は喫緊の課題である」
まったくその通りだ。あとはどのようにして待遇改善を進めていくのかを考えなければいけない。