きれいなラーメンからの反動

学生時代から「ラーメン道」に目覚めて20年超。最近、井手隊長が感じているのが、ラーメンがどんどんきれいで派手になったことへの反動だ。

「2014年発行の『ミシュランガイド2015』にラーメン部門が新設されて以降、創作ラーメンも増えました。たとえば当初から評価が高かったのが、鶏の分厚い旨味が特徴の清湯系(澄んだスープ)の醤油ラーメン。麺線も含めて“きれいなラーメン”が評価されてきました。その一方で、昔ながらのラーメンが近年再注目されています」

どんな動きが出てきたのか。井手隊長が続ける。

「ミシュラン系に触発されて、新しさを追うラーメンが増えてきましたが、ここにきて昔ながらの“中華そば”はやっぱり美味しいよね、と原点に立ち返り始めています。作り手側のお店の人も、毎月のように原材料費や光熱費が上がり、そして人件費高騰もあり、立ち止まって考えるようになりました」

すべての店舗ではないが、ミシュランに掲載されるお店のラーメンはこだわりの一品という感じで、味もさることながら値段もほかの店舗とは異なる。こうしたきれいなラーメンに対し消費者はどう感じているのだろう。

「このところ若い世代で町中華人気も高まっています。おしゃれではありませんが、ラーメンを中心にいろんなメニューがあり、気軽に利用できるご近所感がいいのでしょう。

その趣向を組み入れた『ネオノス系』(ネオノスタルジック=昭和の顔をした令和版)ラーメンもあり支持されています」

写真=iStock.com/Tony Studio
※写真はイメージです

スガキヤの超然

冒頭で紹介したスガキヤは9月19日、看板商品のあっさり豚骨系ラーメンの麺とスープを約14年ぶりにリニューアルした。井手隊長も名古屋出張の際、新しくなったスガキヤのラーメンを試食した。

「ライトな豚骨に魚介の味も感じられました。最初にスガキヤのラーメンを食べたのは学生時代ですが、以前の記憶に比べて魚介が効いていたように思います。スガキヤのラーメンは独特のポジションで、オーソドックスでわかりやすい味わいではないものの、『あの味がいい』という固定ファンが多いのも特徴です」

高井尚之『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)

もともとスガキヤの店は、日常生活で使う中型スーパー(1階が食品系売場、上階が日用品や衣料品・雑貨系売場)の一角に多かった。

「関東圏でいえばイトーヨーカドー店内にある『ポッポ』のような存在でしょう。ポッポもスガキヤも、ラーメンもあればソフトクリームもある。買い物したついでにふらりと入れて価格も手頃。その気取らなさがいいのだと思います」

スガキヤの定番ラーメンは1948年の発売以来、ほとんど製法が変わらないという。時代が大きく変わり、消費者の嗜好が変わったことでラーメンのスープにも流行りや廃りがある。しかし、そこからは超然とし、同じ味を続けることで伝統の味として支持を集めるチェーンも確かに存在する。

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