つらい体験から見えてきた本来の価値観

<プロセス② 価値観を見出す>

次のプロセスは、自分らしさに気づく核心部分になります。ここでは、つらい経験を深掘りし、自分の大切にしている価値観を見出していきます。どうして、つらい経験から自分の価値観がわかるのでしょうか。

たとえば、ジェンダー差別で苦労してきたリーダーがいたとしましょう。このリーダーは、職場に公平性がないことに、繰り返し、やりきれなさを感じていました。そして、このつらさをよく内省してみると、つらさの中に、公平性を大事にしてほしいという想いがあったのです。

その想いに気づいたとき、公平性はこのリーダーにとって、なくてはならない重要な価値観になりました。これは1つの例ですが、つらい経験は、その人の大切な価値観を浮かび上がらせます。このプロセスでは、浮かび上がってきた価値観をすくいとり、言語化していくのです。

<プロセス③ 自分の価値観を体現する>

このプロセスでは、見出した価値観をどのように発揮するかを考えます。私たちは、心から大切にしている価値観を発揮することができたとき、喜びを感じ充実感をもてるものです。

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自分の価値観に根差してリーダーシップを発揮すれば、仕事がやりがいのあるものに変わっていきます。このような働き方は、環境変化についていこうと日々あくせく働くのとでは、大きく異なります。このプロセスは、私たちの働き方を抜本的に変えるパワーをもっているのです。

自分を見失ったとき、この3つのプロセスが私たちの処方箋になります。

困難な出来事を受け入れるプロセス

さて、3つのプロセスの輪郭が見えてきたところで、このプロセスのリアリティに迫っていきます。IT企業に勤める工藤由美さんのプロセスを追っていきましょう。

<プロセス① つらい経験を受け入れる>

工藤さんは、新卒で入社した1社目で、すぐに大変な目にあいます。上司に、きつい言葉を浴びせられたのです。

「言われたことしかできないのか?」
「傷つく権利ないよね、仕事できないくせに」
「君がつらいのは、君の勝手だよね」
「これ、やってもらわないと困るよ」

工藤さんは、アトピー性皮膚炎を患っていましたが、こうした言葉を浴びせられ、休ませてもらえませんでした。ストレスでかゆみは増し、30分おきにかきむしるような状況でした。自分はダメだと思っては、お酒を飲んで気分を紛らわせようとしていました。

ほかにも困難な出来事が起こります。転職して、現在も勤める会社での経験です。工藤さんは、新規事業を担当しました。自分で新しいメンバーも採用し、新規事業の立上げにまい進しました。しかし、結局、事業はうまくいかず、その事業から撤退することになってしまったのです。

上司からは追い打ちをかけるように、「新規事業の失敗は、工藤さんのせいだ」と言われ、深く傷つきました。言いたいこともたくさんありましたが、自分の責任にされた理不尽さに憤りを感じました。工藤さんには、自分の存在を認めてもらえなかったという、つらい気持ちが残りました。