報道されたイスラエル兵の悪行

ハマスへの対応を強化するイスラエル軍だが、ガザ地区の住民には決して正義の使者とは映らない。ガザの住民はまた、イスラエル兵の悪行に苦しめられているためだ。

英オンラインメディアで中東情勢に詳しいニュー・アラブによると、パレスチナ住民たちは、イスラエル兵による略奪行為があると証言している。現金、貴金属、ノートPC、携帯電話などを組織的に略奪しており、その総額は約2500万ドル(約36億円)に達すると推計されている。

記事によると、イスラエル兵らは検問ポイントでも価値ある所持品を押収しており、避難を余儀なくされたパレスチナ人が去った後の住宅や店舗、商店も略奪している。パレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区に拠点を置く人権団体「アル・ハク」の法務研究者であるタフシーン・エライアン氏は、「報告されている略奪の被害額は、略奪行為が広範に行われていることを示唆している」と話す。

ガザ市南部に住むターベット・サリムさんは、略奪の被害者の一人だ。イスラエル兵が彼の自宅に侵入し、自身と二人の息子を拉致した挙げ句、家にあった金と現金をすべて盗んで行ったという。別の証言者もいる。ガザ市東部のウム・ムハンマド・ガルビーヤさんは、イスラエル兵が彼女の家に暴力的に侵入し、彼女の夫と長男を拘束した後、彼女の宝石を強奪して去って行ったと、恐怖の体験を語る。

イスラエルとハマスの戦争で住民が犠牲になっている

イスラエル兵はこのような略奪行為をはばからず、一部始終を撮影してはソーシャルメディアに頻繁に投稿している。ガザを拠点とするパレスチナ人ジャーナリストのマハ・フセイニ氏は、「イスラエル兵が市民の財産を略奪し、それを撮影することは、地上侵攻の初期からのイスラエルの慣行である」と指摘している。あるビデオクリップでは、イスラエル兵がガザから盗んだ銀のネックレスを彼のガールフレンドに見せびらかしている様子が映っている。

いつ終わるとも知れぬ戦禍のなか、避難生活を送る人々にとっては、いつの日かまた戻れると信じる自宅が最大の心の拠り所だ。その自宅が繰り返し盗人に荒らされ、平和だった日々の思い出を刻む品々が盗み出されてゆく。戦争で亡くなった家族の形見もあろう。わずかな金のために盗品市場で売りさばかれる現状は、被害者市民たちの胸中を察するに余りある。

このような状況下で、ガザの住民たちは日々の生活をどうにか続けている。彼らの多くが、盗まれた物品を取り戻すために盗品市場を訪れ、わずかな希望を胸に探し続ける。しかし、盗まれた思い出の品々や生活必需品を再び手に入れることは容易ではない。ガザの街は、かつての賑わいを失い、無法地帯と化している。

状況を改善するためには、国際社会の支援と共に、ガザの治安を回復し、住民たちが安心して生活できる環境を整えることが急務だ。一刻も早い戦争の終結と、ガザの再建、そして平和な生活環境の回復が求められている。

ガザ地区の破壊された建物(写真=Saleh Najm and Anas Sharif/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons
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