オスロ合意を反故にした身勝手なイスラエル

イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が激化している。イスラエルとパレスチナの軍事衝突は、このまま他国を巻き込んで第三次世界大戦へと発展していくのか。それともイスラエルが矛を収めるのか。どちらに転ぶのか、現段階では予断を許さない。

イスラエルとパレスチナ
写真=iStock.com/Yuliia Bukovska
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今回、先に手を出したのはガザのイスラム組織ハマスだ。10月7日、ハマスの奇襲攻撃によってイスラエルは約1200人の死者を出し、約240人を人質に取られた。

自慢のアイアンドーム(防空システム)も奇襲攻撃の前には機能せず、狼狽したイスラエルはガザへの空爆を開始。また、人質奪還とハマス壊滅を目的に、地上侵攻作戦も展開している。

11月13日、ガザ当局はこれまでに1万1240人が同地で犠牲になったと発表した。イスラエルによる空爆・地上侵攻はハマスの本拠地があるとされるガザ北部に集中している。国連人道問題調整事務所の調査によると、ガザ北部では住宅の少なくとも45%が破壊・損壊されたという。

発表されているガザでの死者数と住宅の破壊状況のバランスには、違和感を覚える。ガザには約200万人のパレスチナ人が住んでいる。そのうちの半数が北部で暮らしていたとして、住宅の半分近くを失う攻撃があったにもかかわらず犠牲者が1万人強にとどまったのは不思議であり、計算が合わない。この数字の不釣り合いこそが、現地が混乱を極めている証左だろう。誰も被害の実態がつかめていないのだ。

ガザの死者のうち、4630人が子どもなのだ。少子化で苦しむ先進国と違い、貧しい地域は子どもの比率が高い。子どもの死者が多いことは確率的に不思議ではなく、おそらくイスラエルが子どもを意図的に狙って攻撃したわけではない。しかし、それでも世間的な印象は悪い。イスラエルの後ろ盾であるアメリカのユダヤ人社会でも、人道的観点から一時的な停戦を呼び掛ける声があがっている。ところが、イスラエルに手を緩める気配はなく、ネタニヤフ首相は「ハマスを根絶する」と息巻いている。

イスラエルとハマスの争いは、どちらが悪いとは一概に言いづらい。今回も歴史をどこまで遡るかによって見方が変わるが、ひとまず1993年のオスロ合意に立ち返るとわかりやすい。