イスラエルのガザ攻撃をめぐり、世論は真っ二つに

10月20日のドイツ。ZDFポリットバロメーター(公営第2テレビの世論調査)の、「イスラエルがガザ地区へ地上攻勢を仕掛けるのは正しいか」という質問に対し、39%の回答者が「正しい」、41%が「正しくない」、20%が「わからない」と答えた。ドイツ人の意見は真っ二つに割れている。ガザ地区での地上戦となれば、双方に多大な人的損害が出ることは確実であるからだ。

パレスチナのハマスがイスラエルに奇襲をかけたのは10月7日の朝。予想だにしなかった事態と、次々に報道されるハマスの残虐行為に、ドイツ国民は一瞬、金縛りにあったようになった。その日のうちにイスラエル軍は、ガザ地区に報復攻撃を開始し、その後のドイツ世論は、ただちにイスラエル支援一色となった。

イスラエルのネタニヤフ首相(右)との首脳会談を終え、共同記者会見に臨むドイツのショルツ首相
写真=dpa/時事通信フォト
イスラエルのネタニヤフ首相(右)との首脳会談を終え、共同記者会見に臨むドイツのショルツ首相=2023年10月17日、イスラエル・テルアビブ

ところが、それと同時進行で、ドイツ国内に暮らすアラブ系の移民・難民の一部が自然発生的に街に繰り出し、あちこちであたかもお祭りのように、ハマスによるイスラエル襲撃を祝い始めた。その煮えたぎるようなユダヤ憎悪を目の当たりにしたドイツ人は、再び金縛り状態となった。いったい私たちは長年かかってどんな人たちを招き入れてしまったのかと。

集会所に火炎瓶、落書きなどの嫌がらせ

ドイツでは戦後70余年、反ユダヤにつながりそうな主張は、いかなるものもタブーだった。その流れでショルツ首相は今回も、「われわれドイツ人は反セミティズム(反ユダヤ主義)は断固、許さない」と、お決まりの台詞を吐いたが、アラブ系の人たちの熱狂は鎮まらなかった。彼らがパレスチナ支援という名目であちこちで繰り広げているデモは、どう見ても反ユダヤの祝祭であることは間違いなかった。

想定外の事態に慌てたシュタインマイヤー大統領は、「ユダヤ人とユダヤの施設を全力で守る」と宣言。シナゴーグなどユダヤ関係の警備が強化されたが、わざわざユダヤ人保護の徹底を強調しなければならないこと自体が、すでに尋常ではない。

しかも、この頃には、シナゴーグに火炎瓶が投げ入れられたり、ユダヤ人の住宅に落書きがされたりと、数百件もの嫌がらせや威嚇行動が報告されており、ユダヤ系の家庭ではテロを恐れ、子供を学校に送り出すことを控える状況となっていた。

ドイツ政府は、もちろん反ユダヤデモは禁じたが、しかし、暴発が防ぎきれたわけではない。特にベルリンのノイケルンという地域では、デモは再々エスカレートし、18日の夜には、器物破損、放火、警官隊への攻撃などで拘束された暴徒が174人。警官隊にも65人もの負傷者が出たというから、ドイツの首都は由々しき事態となっていたわけだ。