EVは本当に環境にやさしいのか

近年、世界の自動車産業はEV(電気自動車)一辺倒で進んできた。しかし、その流れに変化の兆しが見える。カーボンニュートラルに貢献する技術オプションはEVだけではない。2024年は、それらのオプションの中で何が今後の大きな流れになっていくのかを、予断なく見ていく必要がある。

象徴的だったのは、23年3月に発表された欧州委員会の方針転換だ。

EU(欧州連合)理事会と欧州議会は、「35年までにすべての新車販売をEV義務化」すると22年10月に合意。しかし、EUの行政執行機関である欧州委員会とドイツ政府が協議した結果、合成燃料「e-Fuel」を使うエンジン車の新車販売については、35年以降も引き続き容認されることになった。

また、EV義務化に対しては、ユーザーからも疑問の声が上がり始めている。

ノルウェーは世界でもっともEVが普及している国の一つだ。22年の乗用車新車販売で、約8割をEVが占めた。

EVの普及で見えてきた問題点が、充電の困難さだ。ノルウェーはEVの公共充電器を国策で次々につくり、22年には約2.4万カ所になった。しかし、それでも設備が足りず、街中の充電器には長蛇の列ができているのだ。

電気自動車の充電
写真=iStock.com/Marcus Lindstrom
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EVの充電は時間がかかる。技術的には急速充電も可能だが、バッテリーの寿命が短くなるので忌避されており、結局は長い時間をかけて普通充電するのだ。また寒い地域ではヒーターをよく使うため、電気の使用量も多い。ただでさえ手間がかかるのに、充電してもすぐにまた充電が必要になるという使い勝手の悪さでは、ユーザーからネガティブな意見が相次ぐのも納得だ。

そしてEVは、もっと根本的な問題も抱えている。そもそもCO2の削減にどれだけ役立つのかが疑問なのだ。