カドゥームさんはモンドワイスの取材に、「私たちは皆、体調を崩しています。家族の清潔さを保つための石鹸さえも買えません」と苦境を語る。「ディーゼルではなく食用油を燃やして走る車から排出される排気ガスに囲まれ、ゴミや廃棄物に囲まれて暮らしています」
彼女がそう話す間にも、彼女の子供たちの咳の音がテントの中からはっきりと聞こえてきた、と記事は続ける。会話が続く間も、咳はほとんど止まることはなかったという。
「子供たちは、もう何カ月も肉を食べていないし、肉が恋しいと言っています」と彼女は言う。「でも、肉は今では1キロあたり150シェケル(約5800円)もするのです。とても買える金額ではありません」
10カ月間で4万人が死亡している
ガザ地区の厳しい状況をデータで物語るのが、国連人道問題調整事務所が今年8月16日に公開した報告書『人道状況アップデート #205 ガザ地区』だ。
報告書はガザ保健省のデータをもとに、過去10カ月間で少なくとも4万人のパレスチナ人が死亡したと明かす。そのうち1万627人は子供であり、663人は1歳未満の乳児だった。122のIDPキャンプ(国内避難民収容所)、仮設の避難所、集団センターに、計17万人以上が避難していると推定される。
ガザで水・衛生・衛生管理を統括するWASH当局は、飲料水と家庭用水の消毒に必要な在庫が1カ月分しか残っていないと警告している。報告書は、「避難民が直面している状況は、テントや非食品(NFI)などといった避難所用品の不足、燃料の携行缶やシャンプーなど衛生用品の不足、避難先での基本的なサービスへのアクセス制限が重なり、さらに悪化している」と憂慮すべき事態を克明に伝えている。食料、物資、燃料のいずれも足りておらず、炊き出し施設の運営さえ困難な状況が続いているという。
ハマスが支援物資の60~70%を略奪している
なぜ物資が不足し、法外な価格で食料品を売りさばく闇市が栄えるのか。原因の一端は、ガザ地区を実効支配する武装集団・ハマスにあると報じられている。ハマスがガザで支援物資を奪っているという報道が複数のメディアから出ている。
米シンクタンクのゲートストーン・インスティテュートは、イスラエルのテレビ局・チャンネル12のリポートを取り上げ、ガザに入る支援物資の最大60%をハマスが盗んでいると報じている。ハマスはこの支援物資を売りさばくことで、戦争が始まって以来、少なくとも5億ドル(約715億円)の利益を上げているという。
こうして支援物資は直接住民に渡らず、ハマスを通じて闇市へ流れ込み、法外な価格で売られている。国際ニュースチャンネルのフランス24は、その実情を動画で伝えている。