「歩く」行為ひとつにも脳の多くの部分が使われている

また、「今日は風が強いな」「体がちょっと重いな」というのも脳で感じることです。歩いているときに、自転車が来たから避けよう、人混みだからぶつからないように気をつけよう、と考えるのも頭のなかで決めています。

そもそも、真っすぐ歩こう、つまずかないようにしよう、という「歩く」ために当たり前の行為さえ、脳が考えて指令していることなのです。

そして、起きているときにたくさん使った脳の部分は、就寝中、深い眠りに陥ります。運動をすると脳の多くの部分が使われます。そのため、寝ているときは、脳のほとんどの部分で深い睡眠に入ります。これが、体をたくさん動かしたときに、ぐっすり眠れる仕組みです。

パソコンに一日中向かうデスクワークでは、脳の特定の部分しか使われません。就寝中は脳のなかで、ある部分は深く眠り、ほかの部分は浅く眠るといった偏りが生じます。

体を動かすことが勧められるのは、睡眠学的には、脳全体がしっかり眠っている状態をもたらすからです。

光のエネルギーが強いブルーライトを浴びた結果

夜の暮らしを照らす照明の種類は、白熱電球から蛍光灯になり、現在はLED照明が普及しています。LED照明は、電球や蛍光ランプよりもブルーライトが多く含まれています。

またLEDディスプレイにも多く使われているため、パソコンやスマホ、タブレットからもブルーライトが多く出ています。

近年では、このブルーライトをカットする眼鏡も売られていますが、ブルーライトは私たちの体に、どのような影響があるのでしょうか?

ブルーライトは、可視光のなかでも波長が400〜500ナノメートル(1ナノメートルは、1メートルの10億分の1)と波長がもっとも短い青色の光です。光のエネルギーは、波長が短いほうが強いため、ブルーライトはほかの光に比べて、光のエネルギーが強いのです。

写真=iStock.com/PonyWang
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夜遅くにエネルギーの強い光を浴びると、体内でリズムを刻む時計の針が1~2時間ほど巻き戻されます。

通常は、だいたい覚醒した時刻の16時間後の「寝るべきタイミング」になると、体内時計が脳の各所に覚醒出力を低下させるよう働きかけて、眠りに誘います。しかし、体内時計が後ろにずれ込むと、この眠りに誘うタイミングが遅れてしまい、睡眠時間が確保できず、睡眠の質が悪化するのです。