絵画は誰の作品でも歴史の一部である

住友生命では1977年から「こども絵画コンクール」を開催しています。未来を担う子どもたちの成長をお手伝いしたいとの思いからスタートしたプロジェクトですが、改めて歴代の作品(応募総数は1172万点を超えています)を見ると、これもまた立派な美術作品であると気づかされます。

テーマは毎年変わるのですが、子どもたちによって描かれる場面には時代が色濃く反映されます。作者がなぜその瞬間その場面を選んで描いたのか、作品が私に「考えてみて」と問いかけてくるようです。絵画とは誰の作品であっても、歴史の一部なのでしょう。

私がとくに興味深いと感じているのは“色合い”の変化です。昔の作品には原色が多用され子どもたちのパッションが画用紙から溢れんばかりなのですが、近年の作品には淡い色合いが増えているのです。優しい子どもが増えているのかもしれません。

写真=iStock.com/katleho Seisa
※写真はイメージです

2000年度からは優秀作品をルーヴル美術館(フランス)直結の地下ホールに展示する企画も行っています。歴史上の名作と並んで自分の作品が展示された経験は、誰にとっても生涯の大切な一ページになるでしょう。

さて、マウリッツハイス美術館を訪れ「デルフトの眺望」に感動した私は、その瞬間「フェルメール全作品に出合う旅」をやり遂げようと心に決めました。彼が生涯をかけ残したのは、全35作品(37作品との説もあり)。今日までに日本の企画展などを含め25作品と対峙しましたが、現地の美術館まで行って鑑賞できたのは15作品です。

1カ所で複数の作品に出合える美術館もありますが、エジンバラ(スコットランド)やダブリン(アイルランド)に1作品ずつなど、旅程に組み込みにくいところもあります。

社長業は忙しく、まとまった休みを幾度も取るのは難しい状況です。けれど、そう言っていると、旅の連れ合いである妻ともども、年齢を重ね体力が落ちて、行けなくなってしまうかもしれません。今日も図録を眺めながら、どうやって作品に会いに行こうか、作戦を練っています。私にとってはこれもまた、美術鑑賞の楽しみの一部なのです。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年9月13日号)の一部を再編集したものです。

(構成=渡辺一朗 撮影=宇佐美雅浩)
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