ウクライナ戦争で日本の物価が影響を受けた理由

ウクライナ戦争が日本の物価に強い上げ圧力を加えた経路は、主に2つありました。まず、国際的な商品市況が上がり、輸入依存が高い日本の物価が影響を受けました。

もうひとつは、急速な円相場の下落です。それを招いたのが、FRBによる異例の大幅利上げでした。22年3月の米連邦公開市場委員会(日銀の金融政策決定会合に相当)で、コロナ危機対応のために手掛けてきたゼロ金利政策の解除を決めました。米国の消費者物価上昇率が9%を突破する局面も出てくるようになるなか、年末時点の政策金利は4.25~4.5%になったのです。市場の米金利も急上昇しました。

日本側では、日銀が国債の利回り上昇を抑えつけていましたから、両国の金利差は拡大。金利面で有利になるドルが買われ、円は売られました。円安・ドル高が進むと、日本の輸入物価に上昇圧力がかかるのが普通です。

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為替市場で円高が起きにくくなった

構造的な変化として重要なのは、為替市場で円高が起きにくくなったことです。日本は、貿易でも投資でも巨額の外貨を稼ぐ国でした。このうち貿易で稼いだ外貨(主にドル)の多くは円に交換されるのが普通で、円高要因になります。ところが、2023年の日本の国際収支を見ると、投資では稼げるが貿易ではそうではない国に変身してしまいました。また、企業や個人がこれまでためてきた円資金を海外に投資する動きが広まっています。企業が海外展開を進め、個人も海外への投資を増やすなら、そのために外貨を買う必要があり、円高になりにくくなるのです。

インフレ圧力という点でもうひとつ重要なのが、地球温暖化防止に向けた脱炭素の流れです。石油など化石燃料を手に入れるための投資が抑制されやすくなってきています。一方で、新たなタイプのエネルギーの開発はそうすぐには進まないでしょう。とすれば経済活動を支えるエネルギーの需給が逼迫して、価格に上昇圧力がかかります。