仕事の視野を広げるには読書が一番だ。書籍のハイライトを3000字で紹介するサービス「SERENDIP」から、プレジデントオンライン向けの特選記事を紹介しよう。今回取り上げるのは清水功哉著『マイナス金利解除でどう変わる』(日経プレミアシリーズ)――。
株価チャートと円記号
写真=iStock.com/MicroStockHub
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イントロダクション

2024年3月、日本銀行はマイナス金利政策を解除し、17年ぶりとなる金利引き上げを決めた。背景には2%物価目標の見通しが立ち、国内がインフレ状態になってきたことがある。

今後の経済を展望するためにも、新たな政策に理解を深め、広範に及ぶ影響を知り、デフレに慣れた思考を転換する必要がありそうだ。

本書は、日銀のマイナス金利政策の解除をはじめとする政策の枠組み見直しを節目ととらえ、その内容や意味をわかりやすく解説する。

従来の金融緩和政策は、「金利操作」「量的緩和」「質的緩和」の3つの要素からなっていたが、それぞれの要素は今回の見直しで変化した。また、金融政策の枠組み見直しの背景には、円高や株安が是正されてきたことがあるが、それらを引き起こしたのは金融政策だけではない。むしろ新型コロナウイルス危機やウクライナ戦争に影響された、世界経済の構造的変化の影響が大きいことを理解しておく必要があるようだ。

著者は日本経済新聞編集委員。1964年生まれ。上智大学外国語学部卒業。長年、金融政策やマーケット、資産運用について取材してきた。『日銀はこうして金融政策を決めている』『デフレ最終戦争』(ともに日本経済新聞出版)など著書多数。

序.日銀はなぜ4月ではなく3月に動いたのか
1.何が変わったのか、どう変わってきたのか
2.追加利上げはいつか、金利はどこまで上がるか
3.住宅ローンではどう対応すべきか
4.株の「売り」に専念し始めた日銀
5.なぜインフレになったのか、どう発想を改めるべきか

いわゆる異次元金融緩和政策を終えた日銀

2024年3月19日、日銀がついにマイナス金利政策の解除をはじめとする金融政策の枠組みの大幅な修正を決めました。2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せたと判断し、いわゆる異次元金融緩和政策を終えたのです。

従来の金融緩和政策には、主に3つの要素がありました。(1)金利を下げる「金利操作」、(2)日銀が世の中に供給する資金量を増やす「量的緩和」、(3)日銀が株式などのリスク性資産を買って、事実上その価格を下支えする「質的緩和」――です。

第1に「金利操作」は、短期の政策金利(日銀当座預金の一部金利)と長期金利(10年物国債利回り)の両方をコントロールする長短金利操作(16年に開始)となっていました。

日銀当座預金とは、各金融機関が日銀に持っている口座です。日銀が金融機関に資金を供給する際に、まず振り込まれる場所となります。その適用金利をプラス0.1%、0%、マイナス0.1%の3階層とし、マイナス0.1%を短期の政策金利(政策を運営する際に操作する金利)と位置づけていました。その重要な効果は、長短の金利曲線(イールドカーブ)の起点となる無担保コール翌日物金利(*銀行がお金の貸し借りをするコール市場で適用される金利)をマイナスに沈めたことです。おおむねマイナス0.1~0%程度での推移となっていました。