日本株の乱高下が止まらない。日経平均株価は9月4日に前日比1638円(終値)の急落となり、下げ幅は今年3番目となった。伊藤忠総研主席研究員の宮嵜浩さんは「まるでジェットコースターのような相場が続いている。日銀による長期金利への働きかけは、『金利のある世界』では期待できず、株価の乱高下は今後も繰り返される」という――。
日経平均株価の終値を示すモニター=2024年9月4日午後、東京都中央区
写真=時事通信フォト
日経平均株価の終値を示すモニター=2024年9月4日午後、東京都中央区

わずか3営業日で7000円超の大暴落

株式相場に値動きは付き物である。過去10年ほど、日本株は上昇と下落を繰り返しながら、徐々に水準を切り上げてきた。

34年振りに史上最高値を更新し、今年3月には4万円の大台に乗せた日経平均株価は、その後も上下動を繰り返しつつ、再び3万円台に逆戻りしている。株価の絶対水準が高まった分、その変動幅も大きくなるのは当然であろう。しかしながら最近の日本株の変動幅は尋常ではなく、変化率でみても歴史的な大きさとなっている。

今年8月、日本の株式市場は大波乱に見舞われた。日経平均株価は、7月末の3万9101円82銭から8月5日の3万1458円42銭へと、わずか3営業日で7000円超の大暴落となった。特に8月5日の下落幅は4451円28銭と、1日の下落幅として過去最大である。下落率では▲12.4%となり、1987年10月19日の米国株暴落、いわゆる「ブラックマンデー」の翌日(▲14.9%)に次ぐ過去2番目の大きさを記録した。

ところが8月6日以降、株式相場の地合いは一転する。過去最大の下落幅を記録した翌日に、日経平均株価は3217円4銭の上昇と、逆に過去最大の上昇幅を記録。その後も日本株は堅調に推移し、8月16日には日経平均株価は3万8000円台まで一気に回復した。歴史的な大暴落から一転して急騰するという、まるでジェットコースターのような相場展開である(図表1)。

【図表】日経平均株価とドル円レートの推移
筆者作成

株価の乱高下を招いた2つの「想定外」

下落幅の大きさを別とすれば、日本株が8月初めに下落したこと自体に違和感はない。実際、日経平均株価は7月11日に4万2000円台の史上最高値を付けた後、既に下落基調に転じていた。米国の株式相場、特にハイテク関連銘柄の下落と、外国為替市場で進行していた円高・ドル安に引きずられるように、日本の株式相場は7月の中旬から下旬にかけて、軟調に推移していた。

そうした中、7月末から8月初めにかけて、①米国の景気悪化懸念、②日本銀行による利上げ決定、という2つの「想定外」の出来事が、タイミング悪く重なった。その結果、まずは米金利低下と円金利上昇に伴う日米金利差の縮小観測から、外国為替市場で円高・ドル安が急加速。そこに米国株の大幅下落も加わって、もとより軟調な地合いだった日本の株式相場の下落に拍車がかかった、という構図である。

株価急落後の反発は、その裏返しである。米国でその後、景気の底堅さを示す経済指標が相次いで発表されたことから米国の景気悪化懸念が後退し、米国株が買い戻された。加えて、日銀の内田副総裁が将来の利上げに際し、市場の混乱に配慮する旨の発言を行ったこともあって円金利が大幅に低下し、過度な円高に歯止めがかかった。このように、前述の「想定外」への不安が解消に向かう中で、日本株は上昇に転じた格好である。