“能ある鷹”がにわかに爪を見せた

「アンダー70歳」組のおじさんでは誰がいるか、と考えると、それこそが立候補者9人中の最も分厚い層であり、石破氏、河野氏、茂木氏に加えて林芳正官房長官(63)、加藤勝信元官房長官(68)の5人もいる。

実は私の推しは、増税ゼロを打ち出して岸田現総理の方針に時勢に見合った修正をかけようとする、能ある鷹がにわかに爪を出した茂木敏充氏。「外資系企業出身で、自他ともに認める頭脳派」との強面イメージからのキャラ替え中で、実は海外センスゴリゴリの外交政策通であり国際経済畑のエリートでありプラグマティックな合理派であるにもかかわらず、閣僚、党四役中三役を歴任したために黒子として露出発言を抑え気味にし、株式会社ジャパン自民党という組織を上ってきた人だ。どこのメディアに出ても一般の知名度が低い低いと言われ続けて気の毒である(かく言う私自身もテレビ番組でお目にかかるまではまったくノーマークだった)。

しかしその政策をあちこちで説明して回る姿を見るにつけ、イメージだけではしゃべらない、理論的根拠に基づいた政策の話には説得力がある。なぜ「防衛増税や子育て支援金の社会保険料追加負担の停止」を実行し、増税を撤回しながらも政策としては前政権の決定路線を維持したまま財政支出をコントロールできるのか。茂木氏の外交観と経済の話は特に納得感が高く、慎重に言葉を選びながら決して言い過ぎないが信頼を生む語り口には「日本にこんな政治家がいるのに、みんな知らないなんてもったいない」と感じるのだが、いかんせん私が支持してしまう自民党の政治家は世間一般ではあまり……。

何にせよ、今の世の中、「おじさん」というだけでアレルギーの出る人もいるが、しかしながら2024年のおじさんにもいろいろと才能豊かな人がいるのだ、ということは記しておきたい。おじさんの詰め合わせにも、見るべきところはあるのである。