9月12日に自民党総裁選が告示され、過去最多となる9人の候補者が立候補を表明した。コラムニストの河崎環さんは「派閥の力学が失われて立候補者が乱立し、世論を巻き込まないと決まらない状況になった。相変わらずの『おじさん詰め合わせ』ではあるが、その中にもいろいろと才能豊かな人がいる」という――。
自民党総裁選の特設サイト
9月12日までの、自民党総裁選2024特設サイトトップページ。告示を受けて、13日からデザインが変更されている

「おじさん詰め合わせ」ではあるけれど…

9月12日、自民党総裁選が告示され、7月中旬からそれぞれ水面下の動きを続けてきた立候補者がいよいよ出揃った。野田聖子総務相の出馬は叶わず、かろうじて高市早苗経済安全保障担当相(63)と上川陽子外相(71)がリストインしたものの、相変わらずの「おじさん詰め合わせ」(©️トラウデン直美さん)である。

日本の政界における画期となった「(麻生派を除く)派閥解消」後、初の総裁選。これまでの派閥締め付けで既定路線が見え、一定の予測が立てられた出来レースとは異なり、国会議員たちが旧派閥の論理とは別の――例えば同期会の決定であるとか、次の選挙のためにこっちに恩を売っておこうとかの――自由意志をもって動くために変数が多く、エントロピーが増大、つまるところカオス、よって「面白くなった」とマスコミも大喜びし、各社が総裁選特設サイトでお祭り中だ。

今回、派閥の力学が失われたことによって立候補者は乱立、9名の過去最多となった。票読みのしづらい、ひょっとして40代首相誕生もあり得るかと思わせられる総裁選のエンタメ性を盛り上げるべく、自民党公式で立ち上がった「総裁選2024 THE MATCH」サイトのキャッチコピーは「時代は『誰』を求めるか?」。

世論を巻き込まないと決まらない

格闘技試合の広告を模したビジュアルデザインに、「悪ノリだ」「政界が男性中心主義であり続けることへの反省がない」などの批判もあったけれど、そもそも関係者がそこまで深く考えていたとは思えないので、作らされた代理店も巻き込まれ事故である(あくまで自民党部会の思いつきで、代理店発案ではなかったことを祈る)。

(※2024/09/13追記:だがしかし、自民党総裁選2024ホームページったら、告示翌日の9月13日にはすっかり一新、絶妙な配置で9人の候補者を掲げるデザインに更新されていたのだ! アクセルを踏んだ自民党広報部のPR展開が楽しみである。)

9月13日にデザインが一新された、自民党総裁選2024特設サイトトップページ

そんなキャンペーンを張るのも、総裁選が世論の側へ向かざるを得なくなったため。世論を巻き込まないと決まらない、そういう裏事情がある。

国会議員の票が分散して各候補者間で大差がつかなくなれば、党員・党友票の重要性が上がる。各候補が党内の調整に並行してせっせとテレビ露出に励んでいるのは、世論に近い動きをするといわれる全国の党員・党友に向けたアピールだ。「日本の首相なんて、密室で決まるわけでしょ?」と思われてきたものが、今回そういうわけでもない、ということなのだ。