姓を統一すれば「家族の一体性」は保たれるのか

私自身は同姓婚を選びました。その方が法的に保護される場面が多いからです。ただし、弁護士の職名は、旧姓である「上谷」を使用しています。途中から姓が変わるのは、仕事上は望ましくないからです。

夫に「上谷」を名乗ってもらうことも話し合いましたが、珍しい苗字なので、子どもが「あなたのお母さんは弁護士なのね」「あなたも弁護士になるの?」などと言われるのは避けたいと考え、戸籍上はオーソドックスな夫の姓にしました 。

上谷さくら『新おとめ六法』(KADOKAWA)

事実上、そのような使い分けができるのであれば、「選択的夫婦別姓制度」など不要ではないか、とも考えられますが、戸籍名と職名が違うため、公的手続き等で必ずその旨を申告したり、多くの書類を出さなければならなかったりするなどの煩雑さからは逃れられません。

「選択的夫婦別姓制度」に反対する人は、「姓が違うと家族としての一体性が壊れる」という理由を挙げています。しかし、離婚件数は、1年で約18万件です。私もこれまで数百件の離婚相談を受けてきましたが、その方たちは全員姓が同じ夫婦でした。姓の統一は家族の一体性とは直接関係ないように思います。人の価値観はそれぞれですから、夫婦同姓か別姓かを選べる「選択制」は合理的ではないでしょうか。

さて、寅子と長女は、航一の義母、長男、長女が住む家で同居を始めました。生い立ちやこれまでの生活、価値観などが異なる者どうし、色々と問題が生じ始めているようです。今後、どのような法律問題が出てくるのか、注目したいと思います。

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