思わず「破談か!」とハラハラした数週間
NHKの朝ドラ「虎に翼」では、主人公の佐田寅子と、同僚裁判官である星航一の恋愛・結婚がどうなっていくのか? にハラハラさせられる日が続きました。ともに配偶者が亡くなっており、シングルマザー、シングルファーザーとして子育てしながら仕事をしているという共通点があります。
史実では、2人は法律婚をして、寅子が航一の姓を名乗っていましたが、ドラマでは婚姻届を出さない「夫婦のようなもの」という形をとることになりました。これは現在で言うところの「事実婚」に当たります。
では、法律婚と事実婚、内縁、同棲というのはどのような場合を意味しており、法的な効力にどのような違いがあるのでしょうか。
また、事実婚に落ち着く前に、航一が「結婚はやめましょう」と寅子に告げる場面もあり、「破談か!」と気を揉んだ方も多かったと思います。もし、「別れる」ことを選んだ場合、婚約破棄となりどちらかに損害賠償の支払義務が生じる恐れはあったのでしょうか。そもそも婚約って、どのような場合に成立するのでしょうか?
ドラマの場面を振り返りながら、法律や実務がどうなっているのか一緒に考えましょう。
事実婚でも法的保護はある程度認められる
法律婚が成立するためには、①婚姻する実質的意思②婚姻届の提出、の2つが必要です(憲法24条、民法739条)。
事実婚とは、双方に婚姻意思があり、事実上の夫婦として生活しているものの、婚姻届を提出しないカップルの生活スタイルを言います。つまり、法律婚の②がない状態です。「内縁」も事実婚と同様の意味に捉えられるのが通常です。ただし、「同棲」は、単にカップルが同居しているだけで、結婚する意思まではない状態を指しますので、結婚の枠組みからは外れていると言っていいでしょう(拙著『新おとめ六法』(KADOKAWA)p174–p177参照)。
事実婚は、婚姻届を提出していないだけで、双方に婚姻意思があり、事実上の夫婦として生活しているわけですから、法律婚と同様の法的保護が認められる場合も多いです。