兄がコロナに
病魔は南田さんの身内にも容赦なく襲いかかった。
2021年1月初旬。南田さん(当時55歳)の兄がコロナになり入院。60歳の兄は1歳下の妻と25歳の一人娘と暮らしていた。
「病院は、コロナ患者を扱うエリアとそうでないエリアに分かれていました。たぶん病院関係者でも、エリアが違うと入れなかったのではないでしょうか。もちろん患者の家族は院内に入ることすらできませんでした。兄は妻とLINEしていましたが、当時はまだタブレット面会もありませんでした」
1月下旬、兄は死亡した。
「入院前、コロナの診断を診療所で受けた時、すでに肺は真っ白、ひどい肺炎になっていました。この頃のコロナは肺の奥まで入り込むため、致死率が高かったのです」
母親(85歳)は、この時から昔のアルバムを見て過ごすように。料理ができなくなり、掃除も洗濯もできなくなり、家事は全て父親(86歳)がやるようになった。
2022年は兄の件以外にもいろいろあり、あわただしい年になった。
2月。義母(84歳)の精神状態が安定したため、精神病院を退院し、元いた施設に戻った。
5月。海外出張から夫が帰国した。
9月。母親は、若い頃から慕っていた脳神経外科医の病院に通い始めた。
10月には介護認定を受け、要介護1。デイサービスに通い始める。
2022年に入る頃には、ガスコンロの火のつけっ放しや水の出しっ放しがあり、コンロはIHに替え、水道には人感センサーをつけた。
「2022年の1年間が、最も母の破壊行為や暴力行為が激しかった頃だと思います」
日に日に母親は暴君化していった。(以下、後編に続く)