日本企業の長寿の秘訣は「急がば回れ」

彼に「急がば回れ」という発想はないと思います。

「最初に外堀から埋めていくほうがうまくいく」と考える経営者もいるでしょう。しかし、彼はいきなり本丸に行ってから、どうしたらいいかを考える。考えてみれば、市場価格の1.5倍もの株価でTwitterを買うのは尋常ではないわけです。しかも買収規模にしては広範囲のデューデリ(デューデリジェンス=資産の適正評価)もせずに、です。

彼は買ってから、速攻でコストを削減したり大胆な改革をすることで「デューデリの時間」でさえも無用化してしまうのかもしれません。

日本人である私としては悩ましいところがあります。

100年企業はアメリカよりも日本のほうがはるかに多いのです。日本企業の経営はサステナビリティを大切にします。それができたのは「急がば回れ」という価値観があったおかげでもあると思うのです。

「急がば回れ」が辞書にないイーロンは、大胆にゴールに突き進みます。それは一見、正しいようにも見えます。しかし、このままで、スペースXやテスラ、Twitterが100年企業になるのかは正直わかりません。

多くの日本人がTwitterに魅力を感じる理由

日本でTwitterが成功したのは「急がば回れ」でエコシステムをしっかり作れたからです。私がここで「エコシステム」といっているものは、多くの人が循環的に関わり合う経済圏のようなものです。

たとえば、自らは「コンテンツ」を持たないSNS企業にとって、大事なのはユーザーたちの投稿の質と量です。様々な投稿の中には、文字通りのつぶやきや友人との会話もあれば、ニュースや政治的な意見の発信も、商品を売ろうとする企業の広告もある。

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そんなユーザーの動態を大学が研究して発表すれば、そのニュースがまたタイムラインに登場してユーザーが様々な意見を投稿したり、ちがう団体が別の角度からニュースを出して、またそれに……。と、たくさんの人が多様な使い方でTwitterに関わることで、そのこと自体によって「多種多様な話題が色んなところに波及していく開かれたプラットフォーム」としてTwitterはどんどん魅力的になっていきます。