政治家の語る注意喚起も変わらない

政治家も同様だ。すっかり各地の知事は、コロナの危機を会見で伝えるとネットニュースなどを通じて全国的に注目されることを覚えてしまった。この夏には、こんなタイトルの記事が出た。

新型コロナ感染拡大で大村愛知県知事が緊急会見「第11波に入ったと言わざるを得ない」》(メ~テレ・7月19日)

同記事では、三重県知事である一見勝之氏の発言も紹介されている。

「また、三重県の一見知事は、感染力が強く、ワクチンが効きにくいとみられる新たな変異株『KP.3(ケーピー・スリー)』の感染が拡大しているとして手洗いや適切な換気などを呼びかけました。

『おそらく今年も7~9月にかけてコロナの感染者増えると思う。これからお盆時期に入って移動する人が多くなると思うが、特に高齢者に会う人、基礎疾患を持った人に会う人は、マスクつけるなどして注意してもらいたい』(一見知事)」

完全に2020年のデジャブだ。「換気」「移動する人が多くなるから注意を」「高齢者や基礎疾患者を守れ」「そのためにマスクを着けろ」――もう絶句するしかない。今回の第11波は、10月から始まるレプリコンワクチン接種前のPR期間という意味合いでもあるのか⁉ ともあれ第11波は、今年初頭の第10波と比べて専門家や政治家、そしてメディアの煽りが妙に前のめりに思えた。なんなら彼らからは、ある種のワクワク感すら漂っているように感じた。

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高齢者を優遇し続ける衰退国家

そろそろ「コロナを気にするのはオワコン」という話にすればいいのに、波が来たら「マスクを着けろ!」「高齢者を守れ!」の大合唱。とことん学ばない国である。こうした意見がテレビを通じて流れると、日本人は一斉に信じてしまう。

7回目のワクチンは約1750万回しか打たれていない。2024年4月から原則有料になったことも影響しているだろうが、1回目がおよそ1億475万回、3回目がおよそ8670万回打たれたことを踏まえると、激減といってよいだろう。東京都医師会の尾崎治夫会長は「夏のコロナ治療に公費を投入すべき」と今年7月の定例会見で発言。なんとしても終わらせたくない、という強い気持ちを感じる。円安が一時期160円台まで進み、給料は上がらないのに物価だけは上がるばかり、という衰退国家・日本。

2024年の出生数は日本総研によると70万人を割る見込みで、少子高齢化はますます進む。第2次ベビーブームのピークである1973年の出生数は209万人だったから3分の1だ。この世代が高齢者になるとき、とんでもなく少ない人数の現役世代が支えなくてはならない。つまり、子どもや若者の将来を鑑みるのであれば、少しでも日本の衰退を鈍化させるための策を打つことこそ、喫緊の課題ということ。そんな状況下で「コロナ治療に公費を」とはよく言えたものだ。