人との意見交換もSFの楽しみ方

子どもの頃からずっと一人で本を読んできた私ですが、2010年に「SFマガジン」で連載を持って世界が変わりました。SF小説を語り合える人たちと交流を持つようになったのです。

SF好きは大学の研究会などのコミュニティに属している人が少なくありません。一方、一匹狼だった私には、人とSFについて共有できる世界があるなんて思いもよらなかった。初めてコンベンションに参加したときは、「ここにいる全員、SFについて話しても変な顔しないの?」とテンションが上がりました。

SFのコミュニティは閉鎖的な印象があるかもしれませんが、そんなことはありません。多くの人は、門戸を広げて裾野を広げなければジャンルそのものがなくなってしまうという危機感を持っています。たとえば大森望さんはSF作家を応援したり読者を増やすことにとても力を入れています。照れ屋なので表立ってやらず、むしろワルモノのふりをしていますが、本当はすごくサポーティブな方です。

歴代のSF作家クラブ会長たちも、SFに馴染みがない人たちが親しめるようにすごく努力をしています。なかにはSF初心者を腐す古参がいないわけではないですが、そういう人がいたら私がバールを持って殴りに行くので教えてください(笑)。

SNSが定着して、今は一層「あそこが良かった」「ココの筋が最高」と語り合いやすい時代になりました。このように読書会的に意見交換するのもSFの楽しみ方の一つです。もちろん一匹狼だってかまいません。キャンプだって、みんなでワイワイやりたいときもあれば、ソロキャンプで静かに楽しみたいときもあります。SF小説も思い思いの読書スタイルで、時にはスタイルを使い分けながら、親しんでもらえればうれしいですね。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月30日号)の一部を再編集したものです。

(構成=村上 敬 写真(池澤氏)=本人提供 撮影(書籍)=市来朋久)
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