肉ヘンタイによって「上カルビ」誕生
月日は流れ、1970年代。東京の六本木に店を構える「叙々苑」が不動だった部位数を増やしはじめた。
今でこそ高級焼肉店の代名詞となっている叙々苑だが、開業当時は1日20人ほどしか来客がいなかった。そんな大ピンチの最中、ある肉ヘンタイが店を救うこととなる。
それが、焼肉が大好きな銀座の高級クラブで働くホステスだ。彼女が注文したのは、叙々苑自慢のカルビ。しかも、一番おいしいカルビの脂身をとるよう店側に頼んだ。その要求を受け入れたことがきっかけで、脂身の少ない「上カルビ」という部位が誕生する。
30年以上ざっくりカルビと呼ばれていた部位は、ホステスによってカルビと上カルビに細分化されたのだ(図表3)。
タン塩をレモンで食べ出したのもホステス
さらに、叙々苑では当時マイナー部位だった「タン塩」も扱っていた。当時は肉を焼いてタレをつけずにそのまま口に運ぶスタイルが主流だったのだが、その食べ方でタン塩を注文したホステスが火傷をしそうになったという。
そこで、一旦レモン汁で冷まして食べるようになり、タン塩をレモンで食べるスタイルが誕生した。レモンのさっぱりした味が決め手というより、ただ冷ます目的で一緒に食べ出したのだ。
こうして、叙々苑を訪れた銀座のホステスのわがままから、上カルビとタンという2大部位が生まれたのである(図表3)。